藤井康雄1、2軍巡回打撃コーチ(左)の指導を受ける高山俊=2021年11月28日、鳴尾浜(撮影・榎本雅弘) ファンの姿なき鳴尾浜で、黙々とバットを振り込む男の姿があった。不退転の覚悟で2022年シーズンを迎えた阪神・高山俊外野手(28)。いまは、藤井康雄1、2軍巡回打撃コーチ(59)と二人三脚で歩みを進めている。
「『こういう(体の)使い方があるよ』というところから。こういう風にやるのがやりやすいけど、そうじゃないかと思った時期もあったし、いろいろと話していく中で、4スタンス理論に入れるなら、もともとやっていた動きが普通だったという話です」
トス打撃では藤井康コーチが投げ手を務め、身ぶり手ぶりで指導していた。高山もうなずき、感覚を確かめるようにバットを振る。主たる内容は、打撃フォームなどではなく、根本的な体の使い方についてだった。
「本当はこうやって打っていたけど、こうじゃないかな、こうではないなとか、どんどん変えてきた結果、よくわからなくなったけど、そのままでよかった」
昨季は自身初の1軍出場なし。打開策を見つけようともがけばもがくほど、出口の見えない袋小路に入ってしまっていた。藤井康コーチは「勘違いや思い込みもあったと思う。でも、『こうでよかったんですね』という答え。『そうしなきゃいけないと思っていました』、『違うよ、こうなってもいいんだよ』というところの答えが本人の中でもマッチした部分はあったのかな」と一歩先に進んだ高山の現状を説明した。
12日の教育リーグ・中日戦(鳴尾浜)。高山は天性のバットコントロールを生かした、低く鋭い打球で3安打をマークした。その姿はシーズン136安打を放って、新人王を獲得した2016年を彷彿させる。
「もともと持っている自分らしい打球が出ているというところを自信にしてやっていければいいかなと思います」
厳しい立場に置かれていることに変わりはない。ただ、ファンも背番号「9」が復活することを待ち望んでいる。再び輝きを取り戻すため、高山は立ち止まることなく前に進み続ける。(原田遼太郎)
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