開会式で掲揚された五輪旗(左)と中国国旗=4日、北京(共同) ■2月5日 子供の頃、五輪開催中は毎朝、国別メダル獲得表を新聞で確認していた。金の数が優先され、銀、銅だけでは下位になる。だからこそ、日本が金を取って多くの国を抜いて一気に上位に来たときはものすごくうれしかった。あれは愛国心だったのか。
五輪憲章は「国際オリンピック委員会(IOC)と組織委員会は入賞者の国別ランキングを作成してはならない」と定めている。それでも掲載されるのは、メディアが独自に作ったとしてIOCが見て見ぬふりをしているからだそうだ(1日付産経新聞)。
五輪開幕前に気になるのはメダル獲得予測。スポーツデータの分析・提供を行う米国データ専門会社、グレースノートによると、北京五輪で日本は全体10位の19個(金3、銀7、銅9)だとか。金はスキージャンプ男子ラージヒルの小林陵侑、同女子の高梨沙羅、スピードスケート女子1500メートルの高木美帆。金4だった前回平昌五輪より少ないが、多く見積もられて落胆するよりはいい。
日本選手の活躍を期待したいが、どうも身が入らない。新疆ウイグル自治区での人権侵害に蓋をして、五輪を国威発揚の絶好の機会とする中国の思惑に鼻白んでいるからだ。
2000年のシドニー五輪を取材した作家の村上春樹さんは、五輪を「スポーツマンの祭典」ではなく「国家と大型企業の目的が融合し結びついたところに成立したイヴェント」と断じた(『シドニー!』)。欧米や日本の北京五輪スポンサーは、人権問題への批判が国際社会で高まる中で前面に出るのは得策ではないと判断したのか無言を貫く。それもあって国家の目的ばかりが目立つ。国威発揚は国別メダル獲得表くらいがちょうどいい。(鈴木学)
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