将棋の第71期王将戦七番勝負第3局で敗れ、感想戦に臨む渡辺明王将(日本将棋連盟提供) 渡辺王将の指し回しは悪くなかった。後手番ながら序中盤までの戦い方はパーフェクト。相手が狙った「地下鉄飛車」の作戦を封じ、うまいせめぎ合いを展開していた。
勝負の分かれ目は中盤の終わり。渡辺王将が自玉の隣に角を埋めた局面。通常ならセオリー通りの守り。緩手ではない。問題は相手が〝通常〟の棋士ではないこと。藤井四冠は守りが中途半端と見切り、雪崩を打つように敵陣に攻め込み、勝勢をつかんだ。
渡辺王将は攻めるべきだった。だが、藤井四冠が相手だけに、守備に不安を覚えたのだろう。そう惑わせたのも「藤井マジック」といえる。
藤井四冠は歩を使った小技も巧みで、中盤以降の馬力が違う。得意の競り合いで歯が立たず、タイトル奪取に王手をかけられた渡辺王将は、不安を払拭し、積み上げてきた全てをかける手厚い将棋を指すしかない。(談)
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