米大リーグ、パイレーツの筒香嘉智外野手(30)が、故郷の和歌山・橋本市に大型野球施設「TSUTSUGO SPORTS ACADEMY(筒香スポーツアカデミー)」を建設中であることが17日、分かった。自費で約2億円の総工費を負担。現役選手としては異例の両翼100メートル、内外野が天然芝の球場とサブグラウンド、室内練習場を建設している。将来的には同所を拠点とした少年野球チームも創設し、野球界の裾野を広げていく。
規格外の有言実行だ。DeNA時代からアマチュア球界の改善点を公言してきた筒香が、故郷の和歌山・橋本市に野球施設「筒香スポーツアカデミー」をつくる。
「子供たちが本当の意味で野球を楽しみ、成長できる環境の必要性を感じ、自分なりに発信をしてきましたが、その思いを実現するために故郷の橋本市にスポーツアカデミーを作ることを決断しました」と説明した。
同市のあやの台中央公園近くにある約3万平方メートルの敷地で、既に室内練習場は完成。さらに両翼100メートルの本格的な球場は2015年オフにウインターリーグに参加し、大きな刺激を受けたドミニカ共和国の球場をイメージし、内外野が天然芝となる。練習用にダイヤモンドサイズのサブグラウンドも隣接し、今年中の完成を目指している。
スタルヒン球場(北海道・旭川市)、長嶋茂雄記念岩名球場(千葉・佐倉市)、川上哲治記念球場(熊本・人吉市)など、名選手の名前を冠した球場は国内でも多数あるが、筒香の場合は毛色が違う。次代を担う野球少年、野球少女のために総工費の約2億円を自ら負担した。
DeNA時代の17年1月から少年野球界に〝苦言〟を呈してきた。大声で叱る指導者、未来のある投手の酷使といった〝古き体質〟や、勝利優先のトーナメント制、飛びすぎる金属バットにも異論を唱えた。現役トップ選手による発信力もあり、社会は少しずつ動き出した。今では投球制限を設ける小、中学生の大会も増えている。
野球人口の減少を危惧し、「楽しい野球」の必要性を提言してきた筒香は、「子供たちが思い切ってボールを追いかけられるようにしようと思っています」と最高の環境を提供。将来的にはアカデミーを拠点とする少年野球チームの創設も考えているという。
「ここから大勢の子供たちが野球の楽しさを知り、生涯を通じて野球を楽しめるスタートになるような場所にしていきたいと思っています」。今季でメジャー3年目。自身のプレーだけでなく、行動でも子供たちに夢を与える。
◆筒香の2021年VTR メジャー2年目。5月11日にレイズでメジャー40人枠から外れ、戦力外となった。ウエーバー公示されて同15日にトレードでドジャースに移籍。移籍後は右ふくらはぎの張りで負傷者リスト入りし、7月7日に再び40人枠から外れた。その後は3Aオクラホマシティーでプレーし、8月15日にパイレーツ移籍。パ軍では4番を任されるなど43試合で打率.268、8本塁打、25打点と活躍し、11月30日に1年400万ドル(約4億5800万円)で再契約を結んだ。
◆筒香のアマチュア野球界への提言
★勝利至上主義の撤廃 指導者や親が、子供に勝利を求めすぎる。「楽しいはずの野球なのに、子供が大人の顔色をみて怒られないようにプレーしている」と指摘。
★答えを与えすぎない 技術や動き方など教えすぎるため、指示待ちの子供が増加。「大人が見守ってあげることも必要」。
★飛びすぎる金属バットを疑問視 日本の金属バットは打球が飛びすぎる傾向を危惧。プロ入り後、木製バットへの対応に苦しむ。反発係数の規制が必要。
★トーナメント制廃止 青少年が参加する多くの主要大会はトーナメント方式を採用。勝ち進むほど過密日程になり、子供の負担が大きくなる。
★長時間練習の弊害 短時間で内容の濃い練習で十分。長時間は子供への体の負担が大きいし、集中力も落ちる。指導者の自己満足にすぎない。
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