「なんで俺?」
巨人・中田翔内野手(32)は身長2メートルを誇る左の大砲、秋広優人内野手(19)に自主トレ参加を志願された際、そう返したという。他球団の選手と合同自主トレするのも珍しくない時代、しかも実績ある先輩がそろう巨人だ。プロ入りして初めてオフを迎える背番号55の継承者が、出身校などの縁もない右打者に頭を下げた理由は、確かに気になった。
「他にもっといるやろ」と言っても「一緒にやりたいんです」と頼み込んできた19歳のお願いを、中田は快諾。報道陣に〝意気込み〟を聞かれ、「しっかり体をいじめ抜く期間で、遊ぶ期間ではない。この時期にこれだけやる、というのを一緒に苦しみながら示したい」と兄貴分らしい表情を見せた。
秋広は後日、契約更改後のリモート取材で、志願した理由を「日本ハムの時から守備が一番うまいなと思っていたことと、2軍で一緒にやっていたときにすごい練習熱心だと。タイトルも取られている方が、ああいう姿勢でやっていたのが勉強になった。それに比べて自分はもっとやらなきゃいけないと思い、姿勢を勉強したいと思いました」と説明した。まじめな19歳は「(中田の)一番すごいのは打撃。アドバイスなど聞けたらいいなと思います」とやる気十分。来年1月上旬から沖縄・石垣島でスタートさせ、ソフトバンク・黒瀬、日本ハム・姫野とともにハードな練習で鍛える。
2人の初対面は、秋広が高卒1年目ながら1軍帯同していた、3月の日本ハムとのオープン戦(札幌ドーム)。安打を放って一塁に出た際、一塁手の中田(184センチ)から「でけーからあんま近くに来んな」と笑いながらイジられた。大きな注目を集めていた秋広は当時、「テレビで見ていた方とそういう話をできて、うれしい。ありがたい」と喜び、話題になった。コワモテだが、そんな気さくな一面も秋広が弟子入りを決める理由になったのかもしれない。「近くに来んな」どころか、2人が最も近くで高め合う〝中田塾〟に注目している。(谷川直之)