前半、SH神田(背中9番)のトライに喜ぶ東洋大の選手ら。中大に競り勝ち、29年ぶりの1部復帰を果たした 関東大学ラグビー・リーグ戦入れ替え戦(11日、熊谷ラグビー場)東洋大(2部2位)が中大(1部7位)に26-21で競り勝ち、来季は1993年以来29年ぶりの1部復帰を果たした。中大は初の2部陥落。立正大(2部1位)も専大(1部8位)を53-47で破り、8年ぶりの1部復帰を決めた。2部の2チームがそろって1部に昇格するのは、2015年の日大と関東学院大以来7年ぶり4度目。
■昨年22年ぶり2部優勝も入れ替え戦なく■ 東洋大のSO土橋郁矢(3年)が試合を終わらせようと真横に蹴り出したボールは、メインスタンド最上段まで飛んでいった。両腕を突き上げて喜びを爆発させる紺色ジャージーの集団を見ながら、就任4年目の福永昇三監督(46)は目頭を手で押さえ続けた。
「いろいろなことがこみ上げてきて…」
昨年、22年ぶりに2部で優勝しながら、新型コロナ禍で入れ替え戦がなくなった。涙をのんだ昨年の4年生が大勢観戦した中で、いきなり先制パンチを浴びせた。開始1分45秒。ラインアウトから連続攻撃を仕掛けて中大ゴール前に迫ると、最後はFLタニエラ・ヴェア(2年)が力強く押し込んだ。
後半19分、中大に19-21と逆転された。PR松田新之介主将(4年)は仲間に深呼吸させ、円陣で「最後は気持ちだ。体を張ってタックルしよう」と鼓舞した。決勝トライはその6分後。中大が自陣インゴールで犯したミスをWTB杉本海斗(2年)が押さえた。LO斎藤良明慈縁(らみんじぇん)は「ボールがこぼれたら全員で反応する。日々心掛けている小さなことの積み重ねで勝てた」と胸を張った。
■1~3年生が4年生にビデオレター&必勝ケーキ■ プロレスラーの阿修羅・原として有名なPR原進氏(故人)ら、日本代表4人を輩出してきた。OBで三洋電機(現埼玉パナソニック)LOとして活躍した福永監督は、人格形成を指導の重点に置く。「かっこいい大人、かっこいい男になれ」が合言葉。この試合に向けて1~3年生が5日、4年生にビデオレターを送り、〝必勝ケーキ〟を差し入れた。
「後輩にいい道をつくれた。去年の先輩たちにも恩返しができた」と松田は感謝した。先発15人のうち10人が3年生。29年ぶりの1部に挑む戦いは、もう始まっている。(田中浩)
■東洋大 1887(明治20)年に哲学者の井上円了によって、「私立哲学館」として創立。東京・白山、赤羽台、埼玉・川越などにキャンパスを置き、13学部、学生数約3万1000人の総合大学。矢口悦子学長。野球部は東都大学リーグ優勝20度、陸上部は箱根駅伝優勝4度の強豪。ボクシング部はロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(35)がOB。ラグビー部は1959(昭和34)年創部で、1部最高位は3位が3度(71~73年)。
■データBOX ◉…中大の2部降格で、リーグ戦で2部以下の経験がないチームは法大だけとなった。
◉…1-2部入れ替え戦で、2部の2チームがともに昇格するのは4度目。最近では2014年に拓大と専大、15年に日大と関東学院大が昇格している。
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