並々ならぬ覚悟で、来季に臨む選手がいる。ドラフト1位入団から4年目を迎えるDeNA・上茶谷大河投手(25)だ。今季は開幕ローテーション入りしたが期待に応えられず1勝3敗、自己ワーストの防御率7・15。巻き返しへ、一大決心を下した。
「けがをしないフォームで0勝で終わるのか、けがをしやすいフォームで勝つのか。どっちを選ぶのかといわれたら、僕はリスクを選びたい」
投球フォームを「シングルプレーン」から「ダブルプレーン」に変更する。リリース時に肩から手までがほぼ一直線になり、投球プレーン(投球腕の軌跡がつくる面)が1つになる「シングルプレーン」と比べて、肘が曲がって肩と肘が異なる軌道を描き、面が2つになる「ダブルプレーン」は一般的に負担が大きく、故障のリスクが高いとされている。
東都大学リーグ新記録の1試合20奪三振を記録した東洋大時代、球団新人初の6連勝をマークしたプロ1年目、上茶谷のフォームは「ダブルプレーン」だった。そして、そこにリスクがあることも知っていた。
「プロに入ってから、ずっとけがをすると言われていた」
実際に2年目の昨季、開幕前に右肘の炎症を起こし出遅れた。そこから、けがをしにくいフォームを目指して「シングルプレーン」に取り組んだ。だが、出力が出ない。左腕の使い方を変えたり、サイドスローを調整に取り入れたり工夫を続けたが、最後まで納得のいく球は投げられなかった。
背水の思いで、今季終了後から「ダブルプレーン」に戻すことを決意した。「やっぱり、そっちの方が僕は力が出た。人間それぞれ骨の形も多分違うと思うし、じゃあシングルプレーンの人がけがをしないかといえば、そうではないと思うので」。リスクは承知。下半身や体幹、柔軟性を強化するなど最大限の負担軽減に努めた上で〝リミッター解除〟に踏み切る。
オフの自主トレ場所は、埼玉・川越市にある東洋大のグラウンドを選んだ。「学生のときに見ていただいたコーチ、監督にも練習を見てもらえる。トレーニングと野球をつなげるのに一番かなと」。飛躍を遂げた大学4年間を過ごした地。森に囲まれたブルペン、少し油断をすればマイクのスイッチが入り高橋前監督の厳しい声が飛んだ懐かしいグラウンドで、楽天・藤井聖ら同期とともに再出発を図る。
退路は断った。「来年に懸ける思いを強く、相当な覚悟を持って臨まないといけない」。原点回帰のフォームで、上茶谷が輝きを取り戻す。(浜浦日向)
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