ホームランを放ったレアード(左)をベンチで迎えるロッテ・三木亮 2年連続シーズン2位、そして2年連続CS敗退となったロッテ。投手では佐々木朗、小島、益田、野手ではレアード、マーティン、荻野の活躍が目立った今季だったが、井口資仁監督は〝陰のMVP〟として意外な選手の名前を挙げた。
「もうずっとね、声を出して、ベンチでね、頑張ってくれていた。ある意味、若いやつが負けているんで、『何してんだろう?』と思いますけどね。ベンチ要員ってわけではないですけど、本当に毎日、盛り上げるのは彼しかいないんで、はい。おかげで、どんなときも初回からチームがいい雰囲気でできた」
彼とは8年目の30歳、三木亮内野手だ。今季は84試合に出場し、9打数1安打。終盤、一塁・レアードに代わって守備固めで出場することがほとんどだった。
もちろん、全国的な知名度はない。ロッテファン以外に説明するなら、レアードが本塁打を放った際にベンチ前で握る「エア寿司」パフォーマンスで、その寿司を食べる人だ。「あそこぐらいしかテレビに映る場面がないので(笑)、僕が最初に勝手に食べたのが始まり。気付いたら、レアードがいつも渡してくれるようになりました」と振り返る。
ただ、それだけではない。チームが歓喜の瞬間も、悲哀の瞬間も、チームメートのそばにはいつも三木がいた。10月15日に岡のサヨナラ本塁打でCS進出が決定した際には、アイスクラッシュが入った樽を持って岡をグラウンドで追いかけ回す三木がいた。同27日に救援の佐々木千が打たれて16年ぶりのリーグ優勝の夢が絶たれた際も、泣きじゃくる佐々木千の肩を抱く三木の姿があった。
首脳陣、チームメートの絶大なる信頼が顕著に表れたのは、11月12日のオリックスとのCSファイナルステージ第3戦。日本シリーズ進出には残り4戦4連勝しかない状況で迎えていた試合前の円陣。選手会長の益田、主将の中村奨、先発メンバーらを差し置いて、声出し役に指名されたのは三木だった。「崖っぷちです。どうよ、みんなワクワクしてる?」。その第一声に、ナインは追い詰められた気持ちから解放された。
プロ野球選手である限り、誰だってレギュラーを張り、主役になりたいのは当然だ。三木とて、その思いは同じ。決して諦めたわけではない。それでも、今は「ベンチにはベンチの仕事、役割がある」と言い切る。誰もが「陰のMVP」になれるわけではない。誰よりも献身的にチームを支えた三木だからこその称号なのだ。(東山貴実)