フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズが第1戦スケートアメリカ(10月22~24日、ラスベガス)で幕を開ける。北京冬季五輪シーズンとあって注目される中、GPシリーズに出場する日本のトップ選手がコメントを発表。男子の羽生結弦は「一番の目標は4回転半(ジャンプ)を成功させたいということ。そこに向かって今、全神経と、全気力を使っている感じです」と意気込みを語った。
羽生は2連覇を達成した前回2018年平昌五輪のころから世界初のクワッドアクセル(4回転半)への挑戦を公言してきた。3連覇が懸かる北京五輪を目指すとは明言していないが、五輪連覇を達成してもなお競技を追求し続ける羽生ならではの強い意気込みだ。コロナ禍もあって練習拠点のカナダに戻らず、国内で黙々と調整しているという。成功すれば史上初となる大技を今季のプログラムに入れてくるかどうか。第4戦NHK杯(11月12、13日・東京)と第6戦ロシア杯(11月26、27日・ソチ)での羽生に注目だ。
ただ、フィギュアスケートの環境には首をひねることが少なくない。国際スケート連盟(ISU)は昨季2020-21年シーズン前にルール改正を発表。4回転ジャンプの基礎点を全体的に下げ、それまで15・00点だったクワッドアクセルの基礎点は12・50点に引き下げられた。4回転ルッツ(11・50点)との差は1点しかない。まるでクワッドアクセルを跳んでほしくないかのような得点バランスの悪さだ。
また、今季前に提案されたルール改正では、連続ジャンプの得点を引き上げることを北京五輪〝後〟の2022-23年シーズンから導入するという。現行のルールでは、各ジャンプの基礎点の合計の8割が得点になる。羽生が2018年11月に世界で初めて成功させた、4回転トーループにトリプルアクセル(3回転半)をつなげるハイレベルの連続ジャンプの場合は、9・5点+8点=17・5点の8割、すなわち14点が得点になる。これがルール改正では17・5点がまるまる得点になるというのだが、北京五輪シーズンの今季ではなく、来季からの導入だというのだ。
これには外国の記者も「羽生の意見が聞いてみたい」と疑問を呈している。羽生が来季も現役を続けているかは不透明。なぜ今季前に発表しながら、来季からの導入なのか。誰が泣き、誰が笑うのか。モヤモヤした気持ちをかかえたままGPシリーズが始まる。(牧)