高橋は8回1安打無失点の力投。今季3度目の完封は目の前だったが…。(撮影・水島啓輔) 九回もマウンドに上がった高橋(左から2人目)だったが、福原コーチ(中央)が来て降板することに(セ・リーグ、阪神6-1中日、24回戦、阪神14勝8敗2分、21日、甲子園)百点満点の投球に、甲子園の誰もが完封勝利を待ち望んでいた。しかし、あとアウト3個を残してアクシデント発生。九回のマウンドに上がった高橋だったが、投球練習中に福原コーチとトレーナーが駆けつけ、急きょ降板。8回零封の快投も、不安が残る形でグラウンドを後にした。
「リズム良く投げることができたかなと思う。序盤はあまりよくなかったけど、坂本さんが引っ張ってくれて、いろんなボールを使いながら抑えることができた」
落とせない一戦で手も足も出させない、最高の投球を見せた。許した安打はわずか1本。しかも無四球。七回には京田からの上位打線を3者連続三振に斬った。
八回を終え、準完全試合まであと3人としていたが、九回の投球練習で2球を投げたところでストップし、トレーナーとともにベンチへ。そのまま交代となり、球場は一瞬の沈黙の後にどよめきが起こった。
九回、緊急登板した小川(右)に高橋(左)は手を合わせて感謝した8回90球を投げ、1安打無失点。中日に対して24イニング無失点としたが、予想だにしないアクシデントが降りかかった。矢野監督は「ほぼ完璧な投球」と称賛しつつ状態について「ちょっと違和感があるんでね。無理はさせないでおきたかった」と説明。左肘とみられ、今後についても「今すぐどうとは言えない」と言葉を濁した。
先発の柱として期待された4年目の今季は、春季キャンプで右脇腹を痛めて離脱。その後、上肢のコンディショニング不良なども重なり、9月にようやく1軍初登板。そこから圧倒的な投球で勝利を呼び込み、沈みかけていた虎を引っ張ってきた。ここにきて再び戦列を離れることになれば、今後もクライマックスシリーズなど厳しい戦いが続くチームにとって大きな痛手だ。
「プレッシャーはいつも、どの試合もある。特別な思いは持たずに、いつも通りの投球を心掛けました」
奇跡の逆転V、そして日本一へ、左腕の力は不可欠。大事に至らぬことを祈るしかない。(織原祥平)