ヤクルトと痛恨のドロー。矢野監督は無念の表情を浮かべた(撮影・甘利慈) (セ・リーグ、阪神0-0ヤクルト、25回戦、阪神13勝8敗4分け、20日、甲子園)勝たなあかん!! 阪神はヤクルトに0-0で痛恨のドロー。五回無死一、二塁でバスターを試みた小野寺暖外野手(23)が右飛に倒れ、矢野燿大監督(52)の勝負采配は不発に終わった。ヤクルトの優勝マジックは1つ減って「3」。22日にも阪神のV逸が決まるが、指揮官は奇跡を信じて戦う姿勢を強調した。
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バットを寝かせたままなら、確実だったかもしれない。だが、寝たまま果報を待つつもりはなかった。勝負のバスターに出たが、力ない飛球でつなげず。たたきたい、たたかなければならなかった最後の直接対決はスコアレスドローに終わり、最短で22日にもV逸だ。采配不発の矢野監督は、責めを負った。
「どうしても点を取りたかったらいろいろ考えはありますけど、まあでも自分たちがしっかり点を取ろうという中でやったことなんでね。それは自分自身が受け止めてやっていきます」
九回も守護神のマクガフを追い詰めた。だが、現実に無得点で終わってしまうと、やはり悔やまれるのは五回だ。5番・糸原が左前打、2試合ぶりスタメン復帰の6番・大山が右前打でつないで無死一、二塁。打席には「7番・左翼」で3試合ぶりにスタメン起用した小野寺が立っていた。
同学年の高橋からは9月9日(甲子園)の初顔合わせで左前適時打を放ち、プロ初打点を挙げていた。確実に走者を進め、1死二、三塁にしたい場面。北川打撃コーチは小野寺が打席に立つ前にネクストの坂本に熱い言葉を投げかけていた。
五回無死一、二塁で小野寺はバスターも右飛。矢野監督の勝負手は不発に終わった指揮官と井上ヘッドは声をひそめ、マスク越しに何度も会話した。最初はヒッティングの構えを見せていた小野寺だが、二塁へけん制の偽投が入り、バントの構えに変えて、一転して初球を打ちに行った。結果は力ない右飛。続く坂本も二飛。投手のガンケルは空振り三振で、2人の走者は一歩も動けず。様々な思惑が絡み合って選んだ策は、完全に裏目に出た。
矢野監督は高橋について「球の力もあったし、カーブがよかったからなかなか簡単ではなかった」。だからこそ「何とか1点取りたかった」。この試合だけでなく一気にシーズンの流れも奪い返したかったから、強攻に出たに違いなかった。だが、結果的に逆転Vへ後退する事態となってしまった。
1・5ゲーム差は保ったが、優勝へのマジックナンバーは「3」に減らされてしまった。21日に阪神が中日戦(甲子園)に敗れ、ヤクルトが21、22日の広島戦(神宮)に2連勝すると、そこで望みはすべて絶たれる。
「この引き分けがあって優勝できたな、というものに変えられるチャンスはまだ残っているんでね。残りの試合で自分たちで引き寄せるように全力で戦っていきます」
虎将は自らに言い聞かせた。あのワンプレーも0-0ドローも受け止めるしかない。すぐに立ち上がらなければ、すべて終わってしまう。(長友孝輔)
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