今季のプロ野球は新型コロナウイルス感染防止策の一環として、試合制限が昨年までの延長十回までから九回打ち切りに変更された。
延長回がなくなった影響で、5月16日と8月28日には6試合のうち4試合が引き分けに終わり、1日の引き分け数の最多記録を更新。今季の引き分け試合は91(セ35、パ45、交流戦11)となり、3時間半ルールが適用された2012年の74(セ35、パ28、交流戦11)を上回り、シーズン最多記録を大幅に更新する異常事態となっている。
球団別ではソフトバンクが1982年の中日と並ぶプロ野球記録の19を筆頭に、パは各球団が14以上を記録。セは巨人が17、ヤクルトが16に対し、阪神が7と12球団で唯一の1桁。
試合展開が動く七回以降の終盤に同点になったケースをみると、57試合もある。セ2強の引き分け試合の六回裏終了時点の状況をみると、ヤクルトはリードが7、ビハインドが3、同点が5。終盤に白星を逃す〝ネガティブ〟な引き分けが多いのに対し、阪神は〝ネガティブ〟な引き分けがわずか1だった。
阪神の引き分けが少ないのは先制した試合の勝率が12球団トップの・785(51勝14敗5分け)と高いことに加え、抑え・スアレスの存在が大きい。今季は51試合全て九回に登板し、防御率1・43と抜群の安定感を誇る。八回終了時点でチームがリードしていれば、開幕から負けなしの58勝1分けで、九回の得点もリーグ最多の47(失点29)と多いことも要因といえる。
ヤクルトは引き分けの多さが阪神に対して有利。順位を決定する勝率は引き分け数を除いた試合数で計算するため、現在のように勝利数が少なくても勝率で上回り上位となる。過去に19引き分けした82年の中日は勝利数は巨人の66、阪神の65に次ぐ64だったが、勝率・577で巨人の同・569を上回り優勝。このまま僅差が続けば、阪神との貯金数の差が同数や1少なくても、ヤクルトは勝率では上位になる可能性があり、プレーオフを実施して順位を決めたシーズンを除けば、史上初の2位にマイナスゲーム差で優勝もある。
ヤクルトの優勝のカギを握るのは九回。阪神とは対照的に九回の得点がリーグ5位の25と少なく、失点がリーグワーストタイの46。八回裏終了時点でリードした試合の勝敗は53勝2敗4分けと取りこぼしが多い。改善できれば6年ぶりのリーグ制覇に大きく近づく。(記録担当・小川真幸)
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