22日に行われたプロボクシングのWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ(京都市体育館)は、挑戦者で同級1位の矢吹正道が10回TKOで王者の寺地拳四朗を破り、初の世界戦挑戦でチャンピオンベルトを手にした。
8回を終えた時点でのジャッジの採点は矢吹を支持。9回に寺地が猛反撃を開始してからは目の離せない激しい打ち合いとなった。日本選手同士の見応え十分の世界戦は地上波テレビでの生中継はなく、「カンテレドーガ」での有料配信。2200円を課金して視聴する形式だった。
本記を書いた若手の北池良輔記者は初めてのボクシング取材でいきなりすごい試合を担当したわけだが、実際のファイトを見たわけではなく、リングとは別棟にあるプレスルームにいてモニターで視聴していたという。コロナ禍ならではの話である。
私が初めてボクシングを取材したのも、壮絶な打ち合いだった。1991年12月9日に後楽園ホールで行われた日本ジュニアミドル級(現スーパーウエルター級)王者・上山仁と日本ウエルター級王者・吉野弘幸の一戦。当時ともに10度防衛していた現役日本チャンピオン同士がノンタイトル(155ポンド契約、10回戦)で闘った、いまなお語り継がれるファイトだ。
堅実なスタイルの上山と、左フックを振り回すハードパンチャーの吉野。過去2度の対戦は吉野の1勝1分けだった。サンケイスポーツ後援「ダイヤモンドグローブ」での試合だったため、先輩記者と並んでリングサイドの記者席の最前列で観戦させてもらったが、1回から激しい打ち合いとなり、両選手の汗、そして血が、ノートの上に飛び散ってきた。
7回に3度のダウンを奪った上山のTKO勝ちとなったが、リング上で涙を流して喜ぶ姿が試合の激しさを物語っていた。初めてのボクシング取材で迫力のある試合を目撃し、先輩記者からは「幸せ者だな」と言われたものだ。今はスポーツ新聞の記者もオンラインでの取材が多い。世の中が落ち着いて、後輩記者たちにも生でスポーツを取材してもらいたい。(牧慈)
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