高橋は矢野監督(左)からねぎらわれる。大事な時期によう帰ってきてくれた!(撮影・松永渉平)「今年はもうだめかもしれません」
思わず弱音をもらした。すると、猛ゲキが飛んできた。
「いつまで甘えてんだ! しっかりやれ! 来年、契約してもらえないぞ!」
愛のムチに突き動かされ、前に進むしかないと思った。恩師の紹介で兵庫県内の治療院へ週1度のペースで通い、「ラクリス」という手技に電流の効果をプラスして筋肉や神経に刺激を与える施術を受け、状態も徐々に快方へと向かった。
周囲の支えがあったからこそ手にできた1勝だ。「鳴尾浜で自分が下を向いているときに(チームメートから)声かけてもらったりした。それが励みになった」。なにより復帰を待ち続け、マウンドに送り出してくれた矢野監督へ、恩返しを込めた95球だった。
敗れれば引き分けを挟んで3連敗という正念場だった。エース左腕と呼ばれ続ける男が優勝争いへの佳境で帰ってきた。
「とにかく試合を作って、少しでも勝ちに近づけるようなピッチングをしたい」
背番号29の復活物語はここで終わらない。先頭でゴールテープを切るまで、死力を尽くして腕を振るだけだ。(織原祥平)
番記者