1軍の舞台を目指し、41歳は黙々と汗を流していた。ヤクルト・石川雅規投手(41)にとって、シーズン前半は我慢の期間だったかもしれない。
オープン戦では結果を残せず、開幕はまさかの2軍スタート。4月16日の阪神戦(甲子園)で5回2失点と試合を作ったが、翌17日に出場選手登録を抹消された。以降は、再びファームで調整する日々。次に、1軍に呼ばれたのは6月4日の西武戦(神宮)だった。
もちろん、チーム事情だから仕方のないことだった。エース・小川はもちろん、新加入の田口がしっかりとローテーションを守り、金久保や奥川ら若手にも勝ち星がつく。バンデンハークやサイスニードも加入し、2軍で好結果を残しても、なかなか出番が回ってこなかった。
モチベーションを保つことが難しくなかったといえば、噓になるかもしれない。ただ、家族の支えもあり、前を向けた。毎朝5時半に起き、どの若手選手よりも早く2軍施設に着き、体を動かした。「1軍に上がりたい、1軍に上がって勝つんだ」。思いを言葉にし、己を奮い立たせた。
そして、長年刺激し合い、高め合ってきた〝仲間〟の存在にも支えられた。2軍調整中、スマホの向こうから聞こえてきたのは自身を励まし、前を向かせてくれる言葉。声の主は、青木だった。
「石川さん、絶対に大丈夫だから。チャンスはあるから」
ともに大卒で、石川は2002年、青木は04年に入団。若手の頃から投打の中心選手としてチームを引っ張り、その絆は青木が米大リーグに挑戦してからも不変だった。
今シーズン序盤。青木も新型コロナウイルスの影響で自宅待機を経験し、思うように調子が上がらなかった。「お互い連絡をしたり、来たり。ノリ(青木)も調子が上がらなかったから、元気かな?と。僕もノリに『体が元気だったら大丈夫だから』と言ったりして、お互い励まし合っていましたね」。苦しむベテラン2人は、ともに支え合いながら必死に前に進んでいた。
石川は青木のすごさをこう口にする。
「本当にすごいと思うのは、ヒット1本に対してのどん欲さ。そこに対する集中力は、いままで会ってきた人の中で一番だと思う。ヒット1本打つための準備や努力、体のメンテナンスを怠らないから、そこは投手、野手関係なく、すごく勉強になる。野球選手として尊敬する。それに、いくら打っても、メジャーに挑戦しても、あれだけの数字を残しても、偉ぶらない、変わらない性格、野球に対する真っすぐな姿勢はすごく大好きだね」
8月25日の中日戦(静岡)。石川が先発した試合で、青木は五回に右前2点打を放ち、球団を通じて「石川さんに何としてでもというベンチの雰囲気があったので打つことができました」とコメント。大目標の通算200勝まで残り24勝としている先輩に、1つでも多く勝利を贈りたいというナインの気持ちを代弁した。
石川は今季、プロ20年目。年を重ねれば、必然と同世代は減ってくる。それでも「やっぱりベテランってすごく大事。長いこと一緒にやってきた仲間だし、プロとして長くやってきていろいろやり方を知っているから、話すだけでも全然違う」とベテラン選手の重要性を口にする。
若手選手には分からない悩み、苦しみ。それを分かり、励まし、刺激し合える存在こそ唯一無二だ。石川と青木の間にある「ベテランの絆」。2年連続最下位からの巻き返し、そして優勝へ。2人の力がスワローズには欠かせない。(赤尾裕希)