ウエスタン記録タイとなる13連勝中と好調の阪神2軍の中で栄枝裕貴捕手(23)がひと際、輝きを放っている。
ルーキーイヤーの今季は、開幕こそけがで出遅れたが、6月に復帰すると、ここまで37試合に出場し、打率・238、1本塁打、11打点。数字以上に存在感は高まっている。
スタメンマスクをかぶった26日のオリックス戦(鳴尾浜)では強肩を生かして2度の盗塁を阻止すれば、バント処理でも二塁への素早い送球で併殺に仕留めるなど〝枝キャノン〟を炸裂させた。
「肩に一番自信を持っている。自分の肩で流れを変えたり、投手を助けられるのは捕手をやっていて、これほどうれしいことはない」
入団前から肩の強さは評価されていたが、その試合で成長を感じさせたのは配球面だった。2軍降格後、初の先発のマウンドに上がった藤浪とコンビを組み、7回1失点の好投をサポート。6連続三振を含む12奪三振という数字も、栄枝の好リードが良さを引き出したことを裏付けている。
「iPadで坂本さんと梅野さんが(藤浪さんを)どういうリードをしていたのかを見ていた。自分なりにこうしたらいいんじゃないかなという考えもあって、それをちりばめた配球ができた」
特に捕手の〝色〟を感じさせたのは、緩急を生かした配球だ。藤浪の150キロ超の直球を生かすため、1軍ではあまり使ってこなかった120キロ台の大きい変化のスライダーやカーブも織り交ぜて組み立てた。
「緩いのがあると(打者に)意識させるだけで一番速いストレートがもっと効いてきたり、組み立ての幅が広がるので、それが序盤からうまく使えた」
若虎の頼もしいリードに右腕も「うまくリードしてくれた。試合前に緩い球も使っていこうと話をした中で真っすぐなり、緩い球なり、バランス良く使ってくれて相手も迷っている感じだった」と感謝を口にすれば、平田2軍監督も「存在感を見せて力をつけつつある。点を取られないもん」と成長に目を細めた。
その配球術は、日々の努力のたまものだった。1軍の試合を毎日映像で見て勉強することはもちろん、気づいたことをノートに記すことを日課としている。「(自分の出た試合の)映像を見返してここはよかったなとか、ここはもうちょっとこうしたほうがよかったな、ということをノートに書いている」。また、ノートも3種類あり、それぞれにテーマがあるという。
「1冊は投手の特徴を、もう1冊はチーム(全体)のことを、3つ目はその日の振り返りを書いていて、それぞれ項目ごとに使い分けている」
グラウンド外でも野球漬けの毎日を送る23歳は、虎の正捕手を目指して鳴尾浜で牙を研ぎ続けている。(織原祥平)
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