全49代表校が参加した開会式。選手はマスク着用で、甲子園球場の土を踏みしめた(代表撮影) バデルナは山梨大会でもなかった完投を甲子園で、それも完封で飾った2年ぶりに深紅の大優勝旗を懸けた夏の甲子園大会が開幕した。開会式に続いて1回戦3試合が行われ、第3試合では日本航空(山梨)が4―0で東明館(佐賀)に完勝。身長188センチのプロ注目左腕、バデルナ・フェルガス投手(3年)が125球の力投で5安打に封じ、今大会の完封一番乗りを果たした。昨年は新型コロナウイルス禍で、春の選抜大会と選手権大会が中止。球児の熱戦が始まった。
灼熱の甲子園でスコアボードに9つ目の「0」を刻んだ。公式戦初完封を聖地で飾った日本航空・バデルナは笑顔の花を咲かせた。
「甲子園は思ったよりも大きくて、正直、ビビりました。序盤は緊張もあって、自分の投球ができなくて反省の方が多いですが、最後まで粘れたのは良かった」
昨年の選抜大会と第102回大会がコロナ禍で中止となり、2年ぶりに開催された夏の甲子園大会。188センチの長身左腕が輝きを放った。父がドイツとハンガリーのハーフで、母は香港出身の〝国際派〟。腕が遅れて出てくるフォームで打者のタイミングを外し、凡打の山を築いた。9回を5安打3四球、125球の熱投で乗り切った。
最速136キロ。スライダー、カーブ、チェンジアップを操る技巧派ではあるが、憧れはヤンキースの球速170キロ超の剛腕チャップマン。同じ左腕ということで、その投球を動画で研究するのが日課だ。
決して順風満帆な高校生活ではなかった。初めてベンチ入りしたのは2年秋。それまでは制球難に苦しんだ。転機となったのは昨冬。先輩たちが引退して、自分たちの代となったことで責任感が増し、一からフォームを見直した。今春の関東大会2回戦で選抜覇者の東海大相模に3失点で完投勝ちした。
6月中旬には校内で感染者70人を超える新型コロナウイルスのクラスターが発生。日程を終えている部を除き、全ての運動部はインターハイ(全国高校総合体育大会)予選を辞退した。野球部も対外試合は禁止、全体練習もままならなかったが、豊泉監督は「コロナを言い訳にするな、負けたときの〝保険〟にするな!」と叱咤(しった)した。
7月に入って重ねた紅白戦。手の内を知り尽くした味方相手に投げることで、裏をかく配球術も覚えた。それだけに「インターハイに出られない部活もあって、その分も頑張ろうと思った」とバデルナ。仲間たちの思いも背負って躍動し、今大会の完封一番乗りを果たした。
チームは3回戦に進出した2005年以来の白星。観客が学校関係者に制限されるなか、内野席に頼もしい応援団が帰ってきた。白いパイロット帽に白いワイシャツ姿の男子生徒たちが重低音の太鼓でリズムを取って、ナインを後押しした。
19年以来となる真夏の熱闘。「無駄に球数、ボール球が多かった。満足できていない。次はしっかりと自分の投球ができるようにしたい」。悲願の県勢初優勝に向け、エースの視線は既に2回戦へと向けられていた。(森祥太郎)
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