4回、安打を放つ智弁学園・前川右京=甲子園球場(須谷友郁撮影) 第103回全国高校野球選手権大会第2日第1試合(智弁学園10-3倉敷商、1回戦、11日、甲子園)今春の選抜大会8強の智弁学園(奈良)が14安打の猛攻で倉敷商(岡山)に10-3で快勝した。プロ注目の左のスラッガー、前川右京外野手(3年)が4打数2安打1打点。序盤は沈黙していた打線に火をつけ、勝利に導いた。
■大技、小技 多彩な攻め
鋭い打球が野手の間を抜け、頭を越える。打ち始めたら止まらない。「つなぐ野球」をモットーに掲げる智弁学園の打線が猛打で倉敷商の投手陣を粉砕。主将で4番の山下(3年)が手応えを口にした。
「反省すべきところはあるが、攻撃の仕方は良かった」
高校通算35本塁打の前川が三回まで無得点と沈黙していた打線を目覚めさせた。
奈良大会時の1番ではなく、本来の「3番・左翼」で出場。四回に先頭打者として強烈な打球で二塁手のグラブを弾く内野安打で出塁し、続く山下の左翼フェンス直撃の二塁打で一塁から一気に先制のホームイン。バットと足で大量得点の口火を切ると、この回、森田(3年)のスクイズでもう1点。さらに五回は4安打に四死球を絡めて5点、七回にも3点を追加し、勝負を決定づけた。
前川は第1打席でもチーム初安打となる一塁内野安打を放っており、この日は2安打。五回には押し出し死球で打点1を挙げており、チームの勝利に貢献した。
それでも「自分のスイングができていない」と表情は硬く、小坂監督の評価も「受け身になっている。記録上はヒットだが、打球が上がらない。狙い球が絞り切れていない」と厳しい。
これも、期待すればこその辛口だ。奈良大会5試合を計55安打47得点、打率・407という圧倒的な猛打で勝ち上がってきた。犠打はわずか3。だが、全国大会では打つだけでは勝ち抜けない。この日は森田の2本のスクイズを含め、4つの犠打を決めるなど小技を絡めた多彩な攻めも見せた。
春は2016年の選抜大会を制しているが、夏は1995年の準決勝進出が最高。2大会連続20度目となる今大会で悲願の初優勝なるか。そのためにも1年春から打線の中軸を担ってきた前川の大爆発は欠かせない。(月僧正弥)
前川 右京(まえがわ・うきょう)
2003(平成15)年5月18日生まれ、18歳。三重県出身。白塚小1年から「白塚バッファローズ」でソフトボールを始める。一身田中では「津ボーイズ」に所属。智弁学園では1年春から外野のレギュラー。高校通算35本塁打。177センチ、90キロ、左投げ左打ち。
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