PK戦の末に勝利した日本イレブンは、チームを救ったGK谷(右)に抱きついた(撮影・川口良介)

東京五輪第9日・サッカー 男子準々決勝、日本0-0ニュージーランド=PK4-2(31日、カシマスタジアム)男子の準々決勝で、1次リーグA組を3連勝の首位で通過した日本はB組2位のニュージーランドと対戦し、延長を終えて0―0からのPK戦を4―2で制し、2012年ロンドン五輪以来の準決勝進出を決めた。GK谷晃生(20)=J1湘南=が好セーブをみせた。スペインは延長の末、コートジボワールを5―2で下した。8月3日の準決勝では日本と対戦する。

PK戦の4人目。主将のDF吉田が左にシュートを突き刺すと、イレブンは一斉にGK谷のもとへ走った。歓喜の輪にのまれた守護神は白い歯をこぼし、190センチの大きな体を揺らした。

「本当に、ほっとしています」

言葉に実感がにじむ。PK戦の直前、川口能活GKコーチから相手キッカーの情報を記した紙を渡されたが「全然頭に入ってこなかった」。それでも現役時代、数々の〝神セーブ〟で日本を救った川口氏から「ヒーローになってこい」と送り出され、腹をくくった。相手の2人目、迷いなく右に跳んで両手の平ではじくと、3人目もコースを読んで左へ跳んだ。谷の気迫に圧倒された相手はバーの上に外した。

延長を含めた120分も安定感抜群だった。191センチの長身FWウッドらを擁するニュージーランド相手に、的確な飛び出しでクロスをはね返した。相手の武器だった高さを使わせず、無失点に封じた。

小3でGKを始め、G大阪の下部組織に入団した中1のときは既に168センチ。Jリーグの有力クラブで争奪戦になったほど、「谷晃生」の名は全国に知れ渡っていた。G大阪ジュニアユース監督だった鴨川幸司氏は教え子のMF堂安、FW林に比べ「五輪やA代表に近いと思った」と当時を振り返る。

「足元の技術もセーブもうまく、リーダーシップがあって『サッカー脳』も持っていた。それがあっても身長が足りないことがあるけど、晃生には全てがあった」

見込み通り、谷は14歳で世代別代表に選ばれ、さらに史上5番目(当時)に若い16歳3カ月でJリーグ出場を果たす。それでもG大阪では日本代表GK東口の牙城を崩せず、出場機会を求めて昨年J1湘南への期限付き移籍を決めた。

「僕のことを知らないところで、サッカー選手として自分を試したい」

その向上心で湘南でレギュラーをつかむと、五輪の1年延期も追い風となり、今年6月に大迫から五輪代表の正GKを奪った。今大会はここまで4試合1失点の安定感でチームを支えている。

8月3日の準決勝では五輪前最後の強化試合で1-1で引き分けたスペインと再戦する。「攻撃陣がリズムを取り戻すために、守備でしっかり守る。点をとってくれると信じて守りたい」。MF久保や堂安が不発でも、谷を中心に粘り強く白星を拾える。「歴代最強」と呼ばれる日本がしたたかさを見せつけた。あと1勝で1968年メキシコ五輪の「銅」以来、53年ぶりのメダル獲得が確定。守護神が最後方からチームを後押しする。

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