女子78キロ超級のメダルを手に記念撮影に応じる素根輝(右から2人目)ら=日本武道館

東京五輪第8日・柔道(30日、日本武道館)女子78キロ超級の素根輝(パーク24)を、日大教授として勉学面などからサポートする北田(旧姓・持田)典子さん(54)が取材に応じた。1988年ソウル五輪で公開競技として行われた女子61キロ級銅メダリストは、素根を「職人の柔道家」と評した。92年バルセロナ五輪でともに金メダルの古賀稔彦さん(享年53)、吉田秀彦氏に匹敵する稽古への向き合い方と練習量と絶賛した。

昨年7月に岡山・環太平洋大を退学した素根は今年4月、新たな挑戦に出た。実業団の強豪・パーク24に入社し、日大スポーツ科学部に通う。同部教授の北田さんが、進学の理由を説明した。

「新たな視点でいろんなヒントになる部分がある。今後の人生を見据えて、です。柔道に関してはパーク24と連係しているので勉強などをサポートしています」

猛稽古で知られる柔道私塾「講道学舎」(2015年閉塾)を運営する一家に育った北田さんは、「自立」を教育方針に掲げる。五輪前、素根の練習を見学する機会があり、昔を思い出したという。

「組み際の一瞬を何百回も練習する。毎日反復して、同じ動きを出せるように。講道学舎の練習のようだった。古賀くん、吉田くんの練習と通じるものがある」と稽古への向き合い方を絶賛した。豊富な稽古量にも驚き、「久々に(自分の)〝細胞〟が喜んだ。職人の柔道家をみている気がした」と語った。

環太平洋大時代に指導を仰いでいた古賀さんが今年3月24日に天国へ旅立った。「古賀くんもいろんな思いがあり、無念もあったでしょう。吉田くんとは語っていないですけど、バトンタッチしたという思いはあります」。パーク24吉田総監督と日大北田さんの〝学舎コンビ〟が素根の指導を継承。最高の環境が整った金の卵は努力を続け、輝いた。

「素根と(日体大3年である)阿部の同級生コンビで日本女子柔道を背負っていってほしい」

女子柔道界の創成期を支えた北田さんが、さらなる成長を願った。(石井文敏)

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