八回のピンチを抑えた後藤(右)は捕手の我妻とタッチ。長髪をなびかせた(撮影・納冨康)
タイブレークの末メキシコにサヨナラ勝ちし、決勝打の渥美(12)、生還した山田(11)と喜ぶ日本ナイン=福島県営あづま球場

東京五輪・ソフトボール 1次リーグ 日本-メキシコ(22日、福島県営あづま球場)1次リーグ第2戦が行われ、金メダル獲得を狙う日本はタイブレークの延長八回、メキシコに3―2でサヨナラ勝ちし2連勝とした。同点の七回無死一、二塁から2番手で登板したチーム最年少の20歳、後藤希友(みう)投手(トヨタ自動車)が好救援。無失点で切り抜け、チームを勝利に導いた。

大ブレークの予感を漂わせた。憧れのエースから託されたマウンド。背番号が隠れるほどに伸びた髪を振り乱し、魂の投球を披露した。無観客の福島で、その名をとどろかせたのは、20歳のサウスポーだ。同点の七回無死一、二塁、上野由岐子投手(39)=ビックカメラ高崎=からバトンを受けた後藤が好救援。2回無失点でサヨナラ勝ちを呼び込み、日本の救世主となった。

「上野さんからもらったバトンをしっかりつないで0点に抑えたら、必ず野手が点を取ってくれると。自分を信じて投げることができました」

ソフトボール史に刻まれる〝後藤の35球〟だ。同点に追いつかれた直後の七回無死一、二塁から登板。チーム最年少の後藤は8番のサンチェスを1球で捕飛。続く9、1番も見逃し三振、空振り三振。14球でピンチを切り抜けた。

無死二塁から始まるタイブレークの八回は、内野安打と四球などで2死満塁。再びピンチを招いたが、最後は6番のビダレスから外角のチェンジアップで空振り三振を奪った。21球で片付け、サヨナラ勝ちにつなげた。

39歳の誕生日に121球を投げた上野に「必ず勝ちをプレゼントしたい」と奮闘した20歳。合計35球の熱投に、19歳上のレジェンドも「後藤の投球を見ていると若い頃の自分もこんな感じだったなと。いけいけ、ゴーゴー、全球全力みたいな」と一目置いた。宇津木麗華監督(58)も「大事な場面で昔の上野に見えてくる」と〝上野2世〟の誕生に期待する。

愛知・東海学園高から2019年にトヨタ自動車に入団。今季はノーヒットノーランを達成するなど急成長するホープだ。崖っぷちに強い負けず嫌いな性格は幼少期から変わらない。愛知・野立小時代はソフトボールだけでなく、バスケットボールに水泳と、何でもできる活発な少女。かけっこも速く、スポーツ万能だったが、4歳上の兄・佑友(ゆう)さんには何をやってもかなわない。「そのせいですね。勝ちにこだわるようになったのは」。負けても諦めず、勝負に挑み続ける闘志が自然と芽生えた。

13年ぶりの金メダルを目指すチームはニックネームが「ごっちゃん」のムードメーカー、後藤の活躍で2連勝。23日の開会式を前に、日本選手団に勢いを付けた。

「ソフトボールといえば後藤といわれるようになりたい」

序盤のヤマ場とされたメキシコを撃破。進化を続ける新星が、金メダルロードを明るく照らす。(武田千怜)

後藤希友アラカルト

●生まれ 2001(平成13)年3月2日、20歳。名古屋市出身。

●経歴 野立小-日比野中卒。東海学園高から19年にトヨタ自動車に進んだ。

●日本リーグ 2年目の20年シーズンは9試合に登板し、5勝0敗。防御率1・42で新人賞を受賞。

●2人の師匠 世界のダブルエースの背中を追う。日比野中時代、日本リーグの試合を観戦し、米国のエース、モニカ・アボットに心を奪われた。現在は所属チームのチームメート。日本代表では日本の大黒柱、上野由岐子を見て学ぶ。

●グラブ 「かっこいいから」という理由で、トヨタ自動車に入社後は必ずグラブのどこかに「シルバー」を入れる。

●趣味 「YouTube」を見ること。特に「NiziU」「BTS」「King&Prince」が好き。「頑張っていたら『NiziU』に会えるかな…」と願う。

●座右の銘 初志貫徹。

●最速 115キロ。

●サイズ 174センチ、両腕を広げた長さは178センチ。

武田 千怜(たけだ・ちさと)

 1994(平成6)年11月10日生まれ、26歳。愛知県出身。2018年入社。整理部を経て19年から運動部。東京五輪ではソフトボール、マラソン、競歩、自転車などを担当。



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