後半、左足を振り抜いた久保(右)。エースの一撃が日本を救った

東京五輪・サッカー 男子1次リーグA組 日本-南アフリカ(22日、味の素スタジアム)新型コロナウイルスの影響で史上初の延期となった東京五輪は23日午後8時から国立競技場で観客を入れずに開会式を行い、開幕する。22日は原則24歳以下で争われるサッカー男子の1次リーグが始まり、7大会連続11度目の出場となる日本はA組初戦で南アフリカを1―0で下した。後半26分にMF久保建英(20)=レアル・マドリード=がゴールを決めた。エースの号砲を合図に、日本選手団の快進撃が始まる。

「ガシャン!」。大きな衝撃音を残してポストをたたいたボールは、そのままゴールへ吸い込まれた。無観客のスタンドに向かって、MF久保がスペイン語で叫ぶ。「バモス!」(さあ行くぞ)。0ー0の後半26分、エースが放った一撃が日本を救った。

「練習の量は裏切らない。勝負を決めるとすれば俺。そう自分に言い聞かせていた」

相手のマークを外すと、右斜め45度から左足を強振。低く鋭いシュートはGKが伸ばした手をかすめ、対角線にまっすぐ糸を引いた。五輪の日本最年少ゴール記録を20歳48日に更新。南アフリカ相手に決定機を外す場面が続き、刻々と時計の針が進んでいたが、垂れ込めた暗雲を一振りで払った。

ゴールを決めた久保は歓喜の雄叫び。駆けつけたチームメートに祝福された(撮影・松永渉平)

初戦を迎える4日前、金メダル獲得を目指す日本に衝撃的なニュースが飛び込んできた。南アの3人が新型コロナウイルスの検査で陽性となり、大量の濃厚接触者も認定された。試合開催が2時間前に決まる混迷の中で迎えた初戦。ピッチに立てば「(南アは)すごくコンディションはよかった」と久保は感じたという。「歴代最強」と前評判が高い日本も、初戦の入りに苦しんだ。

久保は技巧派のイメージはあるが、ゴールへの執念は人一倍だ。小学生時代にJ1川崎の下部組織で指導した高崎康嗣監督(現新潟医療福祉大コーチ)はある一幕を思い返す。複数のゴールを使用したミニゲーム。両軍とも何十点も得点が入っても、久保だけは「何対何で勝っている」と状況を把握していた。紅白戦の途中で「最後の1点を取った方が勝ち」とルールが変わると「今までのは何だったんだ」と反発してきたという。

そんなサッカー小僧は五輪開幕前の6月4日に20歳となった。10代から注目を集め「日本で試合をするときに騒がれるのは割り切っている」と話す。「普段見ない人にも分かるような実力を見せていければ」とも。10~15歳まで強豪バルセロナの下部組織で育った。スペインのようなサッカー文化を日本にも根付かせたい-。壮大な夢を実現させるチャンスが、自国開催の五輪だ。

23日に開会式を迎える東京五輪。日本選手団に勢いを与える劇的なゴールを決めた久保は「(次の)メキシコ戦もしっかり勝ちたい」。25日に日本がメキシコに勝ち、フランスが南アに敗れれば日本はA組2位以内が確定し、1次リーグ突破が決まる。勝利の余韻に浸る暇はない。中2日で訪れる戦いに目を向けた。

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