優勝から一夜明け会見の白鵬。横審からは厳しい声が(日本相撲協会提供) 日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)は名古屋場所千秋楽から一夜明けた19日、7人の委員全員が出席して東京都内で定例会合を開き、6場所休場明けで全勝優勝を果たした横綱白鵬(36)に対し、土俵上の振る舞いに関して厳しい意見と苦言が相次いで示された。
横綱が15日間並べた白星の光と影を、横審委員は見逃してはいなかった。進退を懸けて臨んだ場所で自身の最多記録を更新する45度目の優勝を全勝で飾り、危機を脱した白鵬に冷ややかな視線が向けられた。
会合後、オンラインで会見した矢野弘典委員長(産業雇用安定センター会長)は「武道にはありえない。見苦しく、美しくなく、多くのファンのひんしゅくをかったのではないか。(白鵬は)勝つためには手段を選ばないという思いを抱く人が多かったのでは。横綱は大相撲の象徴なのだから」と断じた。
横審は昨年11月場所後、休場の多さを理由に、白鵬に引退勧告に次ぐ重さの「注意」を決議。名古屋場所まで継続していたが、同委員長は「全勝優勝という結果を残したことで(決議は)解除する」とした。
だが、「品格」には強い疑念を突きつけた。場所を通じてみせた立ち合いの張り差し。特に14日目の大関正代戦では土俵際まで下がって立ち合う異様な行動を取った。千秋楽の全勝対決では照ノ富士の顔面を狙い、強烈に右肘を打ちつけるプロレスの「エルボー」のようなかち上げもみせ、ガッツポーズや雄たけびで感情をむきだしにした。
都倉委員は「アウト・オブ・ザ・クエスチョン(論外)」とし、山内委員は「14、15日目はあり得ない。問題外。なにも語ることはない」と一刀両断した。横審によると、八角理事長(元横綱北勝海)が白鵬を呼び出し、こうした行為について厳重注意するという。
横審の規定には実態を調査する権限が与えられており、今後白鵬を呼び改善を命じる可能性もある。矢野委員長は「将来的に必要になるかもしれない」と、注視の姿勢は緩めない。(奥村展也)