ただ一人の女性である倉橋が、日本の金メダル獲得のキーマンとなる(撮影・武田千怜)

新型コロナウイルス感染拡大で1年延期となった東京パラリンピック開幕まで、25日で60日。競技の魅力などを紹介する月イチ特集の第39回は、車いすラグビーの日本代表に迫る。21日に東京大会を戦う12人が決定。30歳の倉橋香衣(かえ)=商船三井=は同競技の日本女子で初となるパラリンピック代表となった。ただ一人の〝女性戦士〟が日本の金メダルの鍵を握る。(取材構成・武田千怜)

屈強な男子選手と並び、堂々と壇上に上がった。21日に東京都内で行われた記者会見。「倉橋」の名が呼ばれ、パラリンピックの車いすラグビー代表としては初となる〝女性戦士〟が誕生した。倉橋は、まばゆい笑顔で決意を示した。

「私がプレーすることで男女混合競技だと知ってもらうきっかけになる。(男性と)同じように戦う姿を見て、元気を届けられたらいいな」

パラリンピックで唯一、車いす同士の衝突が許される競技。その激しさから「マーダーボール(殺人球技)」と称されるほど。圧倒的に男性が多い中で、奮闘する〝女性戦士〟倉橋こそ、日本の戦略を広げる象徴だ。

車いすラグビーでは障害の程度によって各選手に持ち点が付けられる(障害の程度が軽いほど持ち点は高い)。コートに立つ4人の持ち点の合計は8・0点以内にする必要があるが、女性がコートに立つと1人につき、上限が0・5点加算される。倉橋が出場することで、機動力に優れた障害の程度が軽い選手がより多くコートに立てるようになるのだ。

日本代表の強化合宿で、池(左)を止める倉橋。敵の動きを封じる役割を担う(撮影・武田千怜)

倉橋の持ち点は障害の程度が最も重い0・5点で、主に防御を担う。自分よりもスピードがある相手のポイントゲッターを止める必要があるため、鋭い目つきで回りを見渡し、動きを予測。先回りして道をふさぐ。その動きを練習試合で敵として体感した主将の池透暢(ゆきのぶ)=日興アセットマネジメント=は「嫌な場所にいる」と一目置いた。

倉橋はトランポリン部に所属していた文教大3年時に練習中の事故により首を骨折。鎖骨から下の感覚を失った。車いすラグビーは2015年にリハビリの一環で始め、のめり込んだ。18年世界選手権では金メダル獲得に貢献。笑顔がトレードマークの30歳はいまやコート内外で日本に欠かせない存在となった。それでも「女性だからと注目されるのは違う」と持ち前の負けん気で男子選手に食らいつき、ディフェンス技術を磨いている。

東京大会では過去最高成績だったリオデジャネイロ大会の銅メダルを上回る金メダルを目指す。「仲間の持ち味を生かす動きをしていく」。倉橋が日本の壁となり、頂点への道を切り開く。

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