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【飯島栄治八段解説】藤井棋聖以外の棋士は誰も読めない65手目の6八金右 GKがドリブルしながらピッチを駆け上がるようなもの

和服姿で対局室に向かう藤井聡太棋聖=18日午前8時45分、兵庫県洲本市のホテルニューアワジ(土井繁孝撮影)

将棋 第92期ヒューリック杯棋聖戦 五番勝負・第2局(18日、兵庫県洲本市・ホテルニューアワジ、主催・産経新聞社、特別協賛・ヒューリック)終わってみれば、藤井棋聖の圧勝だった。変幻自在の指し回しが全開した〝藤井ワールド〟。際立ったのは中盤だ。

65手目の▲6八金右。玉の周囲を開けた緩い構えから、守り駒の金を玉から離すという常識外の手を指した。渡辺三冠の邪魔な角を追い払う下地を作り、83手目でその金を▲6六金と上げた。

まるで、サッカーのゴールキーパーがドリブルしながらピッチを駆け上がるようなもの。あまりに独創的な手で、藤井棋聖以外の棋士は、誰も読めない。

とどめを刺したのは、終盤149手目の▲7七桂。自玉の上部をがら空きにして相手の銀を誘い込み、飛び道具の桂でわなにはめた。頼みの攻め駒を冷徹に奪われ、渡辺三冠の心は、ここで折れたように見えた。

その渡辺三冠は序盤から素早い指し方を続け、藤井棋聖に持ち時間で差をつける狙いが見えた。しかし、藤井棋聖は持ち時間が10分を切る〝秒読み〟に入っても全く動じず、逆に、渡辺三冠に雑な攻めが目立った。

また藤井棋聖が選択した、攻撃的な戦型の「相掛かり」は、彼のベストな選択肢ではなかった。最も得意な、攻防ともに有効な「角換わり」や守備重視の「矢倉」の戦法も温存している。それを承知している渡辺三冠は、この敗戦にショックを受けたはずだ。

名人位を持つ相手を総合的に上回った藤井棋聖は、無敵に近づいているようだ。(談)

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