武藤敏郎事務総長(代表撮影)

セクシャルハラスメントを「性戯弄(ソンヒロン)」と呼ぶなど、韓国ではときに興味深い新語が作られる。最近の例では「ネロナムブル」か。「私がやればロマンス、他人がやれば不倫」の頭文字を取った言葉で、我田引水的な考え方や行動を表している。

その韓国で先月下旬から、東京五輪・パラリンピックの公式ホームページ(HP)が騒ぎになっている。聖火リレーのルート地図に竹島(島根県隠岐の島町)が描かれているとして、同島を自国領だとする韓国が「五輪の政治利用だ」と批判。日本に撤回を求めた。

HPの地図は、元は国内で流通している日本全図で、北方領土も尖閣諸島もあるが、縮尺通りだから小さな竹島は普通には見えない。私はブラウザで5倍、そのスクリーンショットをさらに4倍拡大して、やっと島の影がおぼろげに見えた。言いがかりに近い非難に、組織委の武藤敏郎事務総長も「地図は地図として変えるわけにはいかない。少なくとも組織委は領土問題は全く考えていない」とあきれ顔だ。

これを言い出した韓国の大学教授によると「東京五輪を通じて独島(竹島の韓国名)を自国の領土と広報しようとする日本の間違った行為」だそうだ。普通は見えず、特にアピールもしていないのに、どうして広報になるのか理解に苦しむ。

国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪会場などでの政治的主張を禁じている。2012年ロンドン五輪サッカー男子3位決定戦で日本に勝った直後、韓国の朴鍾佑は「独島はわが領土」と書かれたプラカードを掲げて走り、2試合の出場停止など処分を受けた。

18年平昌五輪で韓国と北朝鮮の統一チームが使った「統一旗」に当初描かれた竹島は、IOCの勧告で削除された。朝鮮半島の簡略図の旗に、小さな竹島をあえて入れれば、それ自体が政治的意図を示す。IOCにすれば当然の対応だった。

平昌五輪の組織委公式HPは当時、会場エリアを紹介する比較的正確な地図に、縮尺を無視して遠く離れた竹島を記載していた。これこそ「政治的主張」だが、日本政府や日本オリンピック委員会(JOC)からの削除要請に「一考の価値もなく、対応するつもりもない」と切り捨てている。

今回の件でIOCが動かないことで、韓国紙には「日本は優遇されている」といった不満があふれている。来年の大統領選の候補と目される複数の首相経験者が、東京五輪ボイコットを主張するという、人気取りのための明らかな「政治利用」も起きた。だが批判する意見は少なく、ある世論調査では70%以上がボイコットに賛成している。

新語「ネロナムブル」の用例を連日、嫌というほど見せてもらっている思いだ。(只木信昭)

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