今年の将棋界のハイライト、「第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」(産経新聞社主催)が6日に開幕する。初のタイトル防衛に臨む藤井聡太棋聖(18)=王位=は、前棋聖で〝現役最強〟の挑戦者、渡辺明三冠(37)=名人・棋王・王将=と激突する。収束が見えないコロナ禍で行われる第1局の舞台、「龍宮城スパホテル三日月」(千葉県木更津市)は、独自の感染防止対策「防疫7(セブン)」で両雄の闘いをアシストする。
■第1局の舞台は木更津「ホテル三日月」
緊急事態宣言が続くコロナ禍で、開幕局の舞台となるホテル三日月は、万全な感染防止対策を練っている。
同ホテルグループは昨年1月、政府の要請を受け、感染が拡大した中国・武漢から帰国した邦人を勝浦の店舗に受け入れ、自主隔離をサポート。その際の取り組みや、全従業員を対象として指導を受けている総合病院によるコロナ対策講習の実施など、感染防止対策をノウハウ化。飲食業界などの対策の先駆けとなった、従業員間で「防疫7」と呼ぶ7つの防疫ポイント=別表=を実践中だ。
第1局が行われる木更津の店舗でも「防疫7」を実施。中村一英支配人(49)は「昨年の受け入れの経験を生かし、グループとしてのガイドラインを定めて徹底しております」と話す。
■木更津市で38年ぶりタイトル戦
渡辺明三冠木更津市で将棋のタイトル戦が行われるのは、1983年6月の「第42期棋聖戦五番勝負」第1局以来、38年ぶり。藤井棋聖が渡辺三冠と激突する初防衛戦とあって、渡辺芳邦市長(56)はホテル側、観光協会などと「木更津棋聖戦おもてなし実行委員会」を結成。JR木更津駅に棋聖戦の横断幕、市内各所にもポスターを張るなどアピールを展開している。
厳しい現実とも奮闘。当初ホテル側は多くの関連イベントを企画した。対局前日の5日は開幕式と棋士トークショー、木更津や君津など4市の小中学生らが対象の「子ども将棋大会」。対局日の6日も棋士による大盤解説会などを予定。イベント入場券と宿泊のセットプランが完売した。
だが緊急事態宣言が20日まで延長され、将棋大会は中止。開幕式とトークショー、大盤解説会などをセットプラン客向けのリモート配信に変更した。
■関連イベント中止も支配人「光栄」
中村支配人は「地域として盛り上げたいと取り組んできたのでイベントの中止は残念ですが、劇的な条件がそろった五番勝負が当ホテルで行われるのは本当に光栄。万全なホスト役を務めさせていただく」と意気込む。
木更津市で20年以上、子供たちに将棋を教えている「将棋普及協会ちば」の松本璣(たまき)事務局長(82)は、「藤井棋聖の登場で昨年は小中学生の会員が2~3割増え、教室への参加率も8割近い。プロを目指す子もいて『子ども将棋大会』を本当に楽しみにしていたのでつらい」。それでも「最高峰での激戦で、将棋史に残る棋譜が残されるのでは」と期待を寄せている。(丸山汎)
◆ホテル三日月の「防疫7」◆
棋聖戦五番勝負が開幕する「龍宮城スパホテル三日月 富士見亭」=千葉・木更津市❶玄関でのサーモグラフィーによる体温測定
❷全客室にアルコールスプレーを完備
❸全スタッフが同スプレーを携帯
❹食事会場の全テーブルに同スプレーを設置
❺全フロントにアクリル板などを設置
❻スタッフがフェイスシールド装着
❼総合病院によるコロナ対策講習
★第91期棋聖戦VTR
渡辺明棋聖=棋王・王将=に、タイトル初戴冠を目指す藤井聡太七段が挑戦した。
★第1局(2020年6月8日) 中盤まで接戦が続く中、藤井七段が89手目に「1八飛」。渡辺棋聖に飛車を渡す奇策で優勢にたち157手で先勝。
★第2局(同28日) 藤井七段が魔法の一手「3一銀」で渡辺棋聖の意表をつき、90手で2連勝。
★第3局(7月9日) 渡辺棋聖が中盤戦で主導権をつかみ優勢に。1分将棋となった藤井七段を142手で破り1勝。
★第4局(同16日) 藤井七段は中盤まで苦戦。80手目の「3八銀」で渡辺棋聖の最強駒・飛車を封じ形勢を逆転。110手で勝利。3勝1敗で棋聖位を獲得。
棋聖戦
産経新聞社主催の将棋の棋戦で、八大タイトル戦(竜王、名人、叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖)の1つ。五番勝負の勝者は棋聖のタイトル称号を得る。1951年に開始した一般棋戦の産経杯が源流。2018年4月からヒューリックが特別協賛に入り、正式名称は「ヒューリック杯棋聖戦」となった。
この記事をシェアする