大坂はうつに悩まされてきたとしているが、おそらく対人恐怖症だろう。気分が晴れない、意欲的になれないといった状態から「うつ」という言葉を使ったのかと思うが、専門家の言う「うつ」なら手足が機敏に動かなくなり、スポーツなどできないし、話すときも目が動かなくなる。だが記者会見での彼女の表情を見ても目は動いている。不安で緊張し、周囲に気配りしている顔だ。
子供の頃から強い闘争心を持ち、成功してきたのだろう。それがプラスに作用した半面、反動も強い。観客にたたえられるのはうれしいが、関心が集まると「差別される」などといった恐怖心が募り、普通の感覚ではいられなくなるのだろう。
コーチを代えたのも、前のコーチは厳しいことを言う人だったからで、無言で自分を受け入れてくれる今の人を選んだのではないか。記者会見も、聞かれたくないことを根掘り葉掘り聞かれて気がめいっていたのだろう。
大金を稼いでいることで嫉妬され、米国では陰で差別用語をぶつけられる。そんな思い通りにならない状況を「うつ」と言っているのだろう。大人になり切れていない、ともいえる。少し休養して治した方がいいかもしれない。
対人恐怖症なら、米国では認知行動療法が発達している。治療を受けても東京五輪までに完治には至らないが、日本のぬるま湯的な雰囲気の中で、賞金が出ず嫉妬にさらされることも少ない五輪なら、出場はある意味で治療になるかもしれない。(精神科医、ヒガノクリニック院長)
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