タッピング棒を持つ風間さん。渓流釣りのさおを加工して使用している (撮影・武田千怜)

選手と息を合わせ、絶妙なタイミングで、タップする。視覚障害のスイマーが全力を出し切るには選手の目の役割を果たす「タッパー」の存在が欠かせない。

「信頼関係は当たり前。タッパーは選手と一緒に戦う。タイミングよくたたいてくれると思うからこそ、スピードを上げて(壁に向かって)突っ込んでこられると思います」

2014年の春からタッパーとして富田を支える風間さんが真剣なまなざしで語った。

視覚障害の選手はプールの壁の位置を視覚で把握できない。ぶつかってけがをする恐れもある。選手の目となり、ターンやゴールのタイミングを知らせるのが「タッパー」だ。プールの両側に1人ずつスタンバイ。スタート台の横に立ち、タッピング棒と呼ばれる棒で、頭や体の一部をたたき、壁が近づいていることを伝える。

レース本番。夢中で泳ぐ選手は、軽くたたいても気づかないという。風間さんは「私の場合は女性なので普通にたたいたら軽すぎる。本番を想定して日頃から思いっきりたたきます」と明かす。

コンマ何秒を競う競泳の世界。0・1秒を削り出すためにも、たたくタイミングが重要になる。少しでもずれると、ターンやゴールにロスが生じ、タイムが落ちる可能性があるからだ。「場合によっては1秒変わる」という。その日の体調や調子により変化する泳ぎ。タイミングをつかむために「毎日の積み重ねを大切にしている」。

現在、富田は東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターの50メートルプールで、週5日練習する。1回の練習で5000メートルほど泳ぎ、約100回ターンする。風間さんは「信頼関係を築くのは経験と回数。数えきれないくらいタップしてきた」と胸を張った。

息子(クラスは運動機能障害S7)が所属するパラ競泳のチームに富田が加入したことがきっかけで、タッパーを始めた風間さん。最初のうちは「距離をもう少し離してほしい」など、会話をすることでタイミングを確認したが、タッパー歴8年目に突入した今では、タイミングについて話すことはなくなった。一緒に練習を積み上げることで呼吸が合わさった。

100メートルバタフライと400メートル自由形で金メダル獲得を狙う富田。5月21~23日のジャパンパラ大会(横浜)で派遣標準記録を突破すれば、東京パラリンピック代表に内定する。「悔いの残らない、最高のレースで金メダルをとってほしい」と熱を込めた風間さん。大舞台でも一心同体で戦う。

◆タッパー歴8年目の風間さんに聞く

Q、タッピング棒の素材は

A、「私は渓流釣りのさおを250センチくらいに切って使用しています。(先端の丸い部分は)ボディーボードを丸くかたどり、削ったものを接着剤で止めています。釣りざおだけで約2万円。はじめは1本1000円の中古の釣りざおを購入して作っていました」

Q、タッピング棒の規定は

A、「特にありません。地方の大会などに行くと、先端にペットボトルや泡だて器をつけている方もいます」

Q、試合には何本持っていくか

A、「折れてしまうこともあるので、2本は持っていくようにしています」

Q、タップのタイミングは

A、「基本は最後のひと掻きです。原則2回しかタッチすることはできません」

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