4連勝で巨人を圧倒し日本一に輝いたソフトバンク。セ、パ両リーグの“格差”を生む要因にDH制を挙げる声は球界でも多い 改めて「パ高セ低」を印象付けた今年の日本シリーズ。これで8年連続でパ・リーグが日本一となった。交流戦でもパが14回勝ち越している一方で、セは1回だけ。リーグ格差の要因はさまざまあるが、一つにはやはりDH(指名打者)制の有無だろう。
今年の日本シリーズ全戦でDH制の採用が決定された際、日本野球機構(NPB)の井原事務局長は「今年の日本シリーズに限って、このルールでやろうということ。セ・リーグでDH制導入の議論が続けられているのは承知しているが、その議論と今回の決議は一切関係がない」と、あくまでコロナ禍における特例と強調した。
過去の取材を遡れば、最初にセでDH制の導入が話し合われたのは2012年。しかし、8年が経過しても6球団の足並みはそろわない。当初から推進派は巨人。活発な打撃戦がファンを呼ぶという興行面から阪神なども賛同に近い立ち位置ながら、難色を示し続ける球団もある。その最大の理由が、DHには外国人野手をはじめとした新たな補強も必要となることで総年俸の高騰を招き、経営が圧迫される危惧があるというものだ。
球界関係者の間でも「野球は打って、走って、守って、9人でやるもの」「選手交代などの采配の妙味が失われる」との意見も根強い。それ自体を否定するつもりはないが、五輪やWBCなど国際大会でもDH制が採用されている事実は無視できない。例えば、セ投手の今季打撃成績は打率・111(1257打数140安打)。自動的に1アウトを献上しているといっても過言ではなく、9人の打者を相手にするパの投手がレベルアップしていくのも必然だろう。また、晩年の強打者が打撃に専念することで、選手寿命が延びるという利点を指摘する声もある。
人気拡大を目指していたパは米大リーグのアメリカン・リーグに倣い、1975年にDH制を導入した。DH制が定着すると、編成面で守れなくても打てる個性派選手の獲得も可能となった。パとは歴史が違うだけに、セが導入しても軌道に乗るには5年、いや10年かかるかもしれない。それでも、プロ野球が「社会の文化的公共財」を自認するのなら、ファンを楽しませることが使命。セにはパとの格差を放置してきた猛省が求められる。
今年と同じくソフトバンクに4連敗した昨年の日本シリーズ終了後に巨人・原監督は「(DH制導入へ)何をもって立ち止まっているのか、あるいは守っているのか」と発言したが、議論が深まることはなかった。セがオワコン(終わったコンテンツ)にならないためにも、DH制の導入はもはや待ったなしのところに来ている。その意味でも、14日のセ理事会が注目される。(東山貴実)
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