仁川学院高時代は無名の存在だった男が飛び込んだ、全国屈指の強豪野球部。厳しい練習、厳しい競争に勝ち抜くことで、試合に勝つ喜びを全身で感じることができた。「いろいろなことを学べた。すごくいい形で終われましたし、こうやって近畿大学で活躍できてプロの道に進めたのはよかった」。大きな成長を遂げた4年間。田中監督も「この4年間、努力をしてきたたまもの。プロにいける素材に経験と精進が重なった」と最後の雄姿に目を細めた。
「次はプロという舞台になるので、それに向けて準備していきたい」
新型コロナウイルスの影響で、例年ならこの後、日本一を決めるはずの明治神宮大会は中止になった。大学ラストの公式戦。有終の美を飾り、視線は次の舞台へ-。即戦力野手として大きな期待を背負う男は、優勝はもちろん、もっと大きな目標も約束した。
「負けるよりは勝つほうが絶対いいので。チームを勝たせる活躍、自分が打って活躍して勝てれば一番いいですね。しっかり活躍してその(日本一の)輪に入れればいいかなと思います」
大学最後に果たせなかった日本一は、虎で達成する。15年連続V逸、日本一は1985年を最後に遠ざかる阪神。未来を担う大砲が、大きな夢をタテジマで実現する。(原田遼太郎)
★父・博信さん「愛される選手に」
スタンドでは佐藤輝の父・博信さん(53)と母・晶子さん(48)が大学最後の雄姿を見届けた。博信さんは「ひたすら楽しい野球をしていた高校から、大学で勝負の厳しさ。勝つ喜びを知ったと思う」と振り返った。プロの世界へ飛び込む愛息へ「チームのためにここ一番で打てる選手。そういう活躍をすればみんなに愛される選手になってくれると思います」と願った。
★嬉しい初サイン
佐藤輝の初サインをゲットしたのは、大阪市住之江区の松尾颯太くん(14)=加賀屋中2年=だ。取材を終えた佐藤輝に駆け寄り、水筒に書いてもらった。「阪神ファンで、テニスしに来たら佐藤選手が試合してると聞いて。めっちゃラッキーです。水筒は洗えません」と大喜びだった。
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