2016年リオデジャネイロ五輪陸上男子400メートルリレー銀メダルのケンブリッジ飛鳥(27)=ナイキ=が、群雄割拠の短距離界で東京五輪の主役を狙う。今季は100メートルで3年ぶりの自己新となる10秒03を記録。10月1日開幕の日本選手権(新潟市・デンカビッグスワンスタジアム)で4年ぶりの優勝を目指す。渡部文緒トレーナー(46)の話を基に復調の理由を探った。(取材構成・鈴木智紘)
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雌伏のときを経て、ケンブリッジは強くなった。8月にマークした自己記録の10秒03は今季日本勢最速。「無駄な力を使わず、100メートルを流れるように走れている」と自己分析する。体の使い方を見直した成果がタイムに表れている。
好走を支えているのがトレーナーの渡部氏だ。フィギュアスケート男子で五輪メダリストの高橋大輔(関大KFSC)をサポートしたことで知られる。ケンブリッジとの出会いは昨夏。秋に控えた世界選手権を前に、筋肉の状態や関節の可動域をチェックした。
「筋肉の左右差を感じた。うまくいっていないのかなという印象は受けた」と明かす。正式にトレーナー就任を頼まれた昨年11月。一流選手を支える労苦を知るだけに、引き受けるか迷ったという。トップスプリンターとともに東京五輪を目指せることが決め手となった。生活拠点を置く札幌市から飛行機で週に2度上京し、指導にあたっている。
ケンブリッジは「静」から「動」への転換が苦手という。改善に向けて取り組んだのが、上下左右への力の伝達や体の連動性を磨くトレーニング。片足で椅子に立ったり座ったりするメニューが代表例だ。渡部氏は「片足でそういう動作ができないと力を逃すことになる。(走りの)スタートの部分にダイレクトに関わる」と説明する。
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