阿武咲をはたき込みで破る翔猿=両国国技館(撮影・田村亮介) 大相撲秋場所11日目(23日、両国国技館)新入幕の東前頭14枚目翔猿(とびざる、28)は2敗同士の取組で阿武咲(24)をはたき込み、首位集団に踏みとどまった。大関貴景勝(24)、関脇正代(28)はともに白星を挙げて9勝目。2敗は貴景勝、正代に平幕若隆景(25)、翔猿の4人。1差で大関朝乃山(26)、平幕照ノ富士(28)、阿武咲の3人が追う。11日目でトップに4人が並ぶのは、平成28年名古屋場所以来。
荒れ模様の秋場所をさらに盛り上げる。新入幕の翔猿が2敗同士の対戦で阿武咲を破り、自らの手で競争相手を引きずり下ろして優勝争いの最前線に踏みとどまった。
「誰が相手でも思い切りいく、というのがよかった。どんどん前へ出られている」
右を差したが、振りほどかれて押し合いに。右足を飛ばす蹴返しも仕掛けたが「とっさに出たが、とっさにやめた」。8日目の佐田の海戦でも右の蹴返しを見せ、自ら体勢を崩して自滅した。「蹴返しをして負けているので。頭をよぎった」と、野猿よろしく俊敏に危機を察知。動きを止めず、最後は大きく右へ回り込みながら、はたき込んだ。
しこ名にはワイルドな獣の文字を使っているが、本人はいたって身ぎれいにしている。現在は新型コロナ感染拡大防止のため、各部屋の稽古は非公開だが、稽古後の風呂上がりには化粧水の香りを漂わせ、銘柄品のボディークリームまで塗って脱毛にも気を配る。
入門当初から「相撲は裸の姿を見せる。気をつかうのは当然だと思う」と美意識が高く、翔猿流のグルーミング(お手入れ)でツルツルピカピカ。相撲も肌も輝きを放つ。12日目には同じ2敗を守った平幕若隆景との対戦。連日のサバイバルとなる。新入幕力士の優勝を実現させれば、大正3年夏場所の東前頭14枚目両国以来、106年ぶりだ。
取組を編成する高田川審判部副部長(元関脇安芸乃島)は「動きがいい。勝ち星次第ではどんどん上位と当てていく。そういう取組が組めるよう頑張ってほしい」。2敗力士4人のうち、番付は最も低い東前頭14枚目。優勝争いには「全然まだまだじゃないですか」と翔猿。気負いも欲もない。(奥村展也)
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