その後の作品では、自分の中で役を作り上げ、出していく作業になっていきましたが、ここまで丁寧に教えていただけたのは贅沢な時間で、当たり前ではなかったと感じました。女優としてどのタイミングで母親役に挑戦するかなど、年齢で役の切り替えに戸惑うと聞いたことがありましたが、1人の女性の約30年間を演じたので、最初から母親役を経験し、そういう意味では自然に役を受け入れられました。
でも、大人びた見た目のせいかあまり新人には見られなくて、「できません」とは言えないし、実力といただいた役の差を感じて体調を崩した時期もありました。
体調がよくなり、詩人の金子みすゞ役を演じた映画「みすゞ」(2001年)は、全部の悩みを取っ払ってくれました。映像の中に映るのが仕事なのに、五十嵐匠監督にこの枠から出てもいいと言われ、自由な動きをしていいんだと思ったときに、自分で作っていた枠がすとんと落ちました。
ありがたいことに、ボコボコに傷つけられる役、しっかり者で強い役、純粋な役と幅広くやらせていただいています。どの役も実際に楽しんで、見ている人にも楽しそうだなと思ってもらえたらと考えています。
ヒロインだった頃を振り返ると、こうなりたかった、ああなりたかったという思いがこみ上げますが、「初めて」という強さがありました。そういう意味で、今の自分は昔の自分にかなわないな。今、撮影現場で初めてヒロインなどを演じる方に会うのがすごく好きです。応援する気持ちになり、いとおしく感じますね。(おわり)
★コロナ禍で変化するドラマの「スタイル」
新型コロナウイルスの影響でドラマなどの制作スタイル、観賞スタイルも変わらざるを得ない状況だ。「この事態そのものを題材にするではなく、今、私たちが経験していることの何かをお芝居で伝えていけたら。これからやり方が変わっていったとしても、考えつかなかったようなことをもっと考えていきたいですね」と話した。
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