■12月16日 パッと散るのが定めのサクラも散り際は一様ではないらしい。安倍首相主催の「桜を見る会」問題では臨時国会が閉会しても野党は「引き続き疑惑追及の手を緩めない」と意気込んでいる。いわゆる「アベノザクラ」は散りそうで散らず年を越して来年1月からの通常国会で、もうひと花もふた花も咲くのかもしれない。
枯れ木に花を咲かせる花咲じじいもびっくりの息の長さ。相当手の込んだ品種改良でも施されたのか。そこへゆくと、これはまた見事な「サクラの中のサクラ」といった感じの散り際を見せたのが「ザギトワザクラ」。女子フィギュアスケートのアリーナ・ザギトワ(ロシア)だ。
2018年の平昌五輪金メダリストでまだ17歳。満開を迎え、これからも美しさを誇示して人々を魅了するのかと思いきや13日、ロシアのテレビ番組で突然競技活動の停止を表明した。「私は五輪や世界選手権で勝った。人生におけるすべてのものを手にした」。そう言われると「おっしゃる通り」とうなずくしかない。
先日のGPファイナルは最下位。同国の後輩たちが4回転やトリプルアクセルをポンポン跳ぶ一方で、ザギトワは平昌当時から身長が7センチ伸びて162センチに。「1センチ伸びただけで回転バランスが崩れる」ともいわれジャンプでは勝負できなくなったようだ。昔のような芸術性重視でなくジャンプがすべての時代が生んだ悲劇でもある。
今後は「スポーツ大学に進みコーチを目指す」といい、アイスショーでは滑るとか。散るに散れない「年越しアベノザクラ」には世間の関心は薄れても、惜しまれつつ、はかなく散る「ザギトワザクラ」は人々の記憶の世界では当分満開のままだろう。 (今村忠)