魅惑のサブマリン、高橋礼がプエルトリコ打線を翻弄。6回1安打無失点と圧巻の投球で勝利に導いた(撮影・長尾みなみ) 第2回プレミア12 1次ラウンドB組(6日、日本4-0プエルトリコ、台湾・桃園)B組の2試合が行われ、日本はプエルトリコを4-0で下して開幕2連勝を飾り、2次ラウンド進出を決めた。先発の高橋礼投手(24)=ソフトバンク=が六回2死まで完全投球を見せるなど、6回1安打無失点の快投。国際舞台で輝くサブマリンが日本の大会初制覇、さらには2020年東京五輪での金メダルへ、切り札として名乗りを上げた。日本は、7日に同じく2連勝で1次ラウンド突破を決めた台湾と1位通過を懸けて対戦する。
誰よりも低いところから、世界を見下ろすように投げた。高橋礼が、下手投げから繰り出すボールで相手を翻弄。六回2死まで完全投球を演じ、18アウトのうち14個をゴロで奪うなど侍サブマリンの系譜に堂々と名を連ねた。
「自分の武器は真っすぐで押すこと。ストレートを軸に、しっかりとストライクを取れた。打者が打ちたくなるようなコースを狙い、そこから曲げたり落としたり芯を外す投球ができた」
6回1安打無失点とほぼ完璧な内容に、してやったりの表情を見せた。
当初は先発の柱と期待された岸(楽天)が託される予定の一戦だった。しかし、岸は発熱で10月30日の練習を欠席。急浮上したのがサブマリン右腕だった。そのまま上陸した台湾で、実力を遺憾なく発揮した。
2013、17年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2大会連続の準優勝を飾ったプエルトリコ。今回は控え中心のメンバー構成ではあったが、米大リーグ経験者を5人並べるなど侮れない相手だった。
しかし、高橋礼は高低、緩急を巧みに操り、面白いように大柄な打者の体勢を崩した。一回は全て内野ゴロで三者凡退。六回、2死から四球を与えて初めて走者を出し、初安打を許して一、二塁とされた場面では右打者のデヘススに内角高めの直球でファウルを打たせ、もう一度内角を攻めた後、最後は114キロのスライダーで空振り三振に仕留めた。
プロ2年目の今季、初勝利を含む12勝(6敗)を挙げてパ・リーグ新人王の筆頭候補と目されるなど、一気にブレークを果たした24歳。昨秋の日米野球では、まだプロで1勝も挙げていなかったが侍ジャパンに初選出された。
それも、稲葉監督が世界での下手投げの有用性を知るからこそだ。現役時代の指揮官も出場した2009年のWBCなどで活躍した渡辺俊介(当時ロッテ)に13、17年WBCでフル回転した牧田和久(当時西武)。代々アンダーハンドで受け継がれてきたバトンを、高橋礼も確かに受け取った。プレミア12初制覇はもとより、金メダルを目指す来夏の東京五輪に向けても切り札として浮上した形だ。
プエルトリコのゴンサレス監督が「国内では、あのようなスタイルの投手は見たことがない」と目を白黒させれば、稲葉監督は「礼が非常に素晴らしい投球をしてくれた。シーズン中なら続投」とたたえた。完全試合を逃し「少しもったいなかった」と苦笑いした高橋礼だが、国際舞台でその名を確かに知らしめた。 (長友孝輔)
★アンダースロー投手の国際大会
◆渡辺俊介 2000年のシドニー五輪、06、09年のWBCで日本代表に選出。WBCでは2度の世界一に貢献した。06年には第2ラウンドの韓国戦で6回を無失点に抑えるなど、3試合(うち先発2試合)に登板し防御率1.98の好成績を残した。09年はリリーフで2試合に登板し無失点。
◆牧田和久 2013、17年のWBC、15年のプレミア12で代表に選出。13年WBCでは3試合に登板し、無失点。17年WBCでは抑えを任され、7試合中5試合に登板。小久保監督(当時)に「困った時の牧田」と評された。
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