田中銀之助氏の顕彰碑(右奥)の完成記念墓参に訪れた田中真一氏(前列中央)ら慶大、学習院大の関係者 【ノーサイドの精神】W杯が終わった。国際統括団体ワールドラグビーの幹部が「過去最高の大会だった」と言うのもうなずける、素晴らしいゲーム、素晴らしいファン、そして、すばらしいもてなし。だが、ラグビーはまだ続く。
決勝翌日の3日には、関東大学ラグビーが再開した。東海大-日大が行われた東京ガス大森グラウンドや、明大-青学大などがあった4日の上柚木陸上競技場(東京都八王子市)は、お客さんでいっぱいになった。
「何だか、ラグビーを見たくなって。ここが近かったので来ました」
東京ガスグラウンドでにわかを自称する女性ファンが、いみじくもそう話した。熱は冷めていない。
6日午前、1899年創部の慶応義塾にラグビーを伝えた田中銀之助氏の顕彰碑完成記念墓参が東京・多磨霊園で行われ、筆者も取材に訪れた。2年前に、銀之助氏とともにラグビーを伝えたE・B・クラーク氏の顕彰碑が神戸市内の墓所にできたこともあり、慶応義塾の創部120年とW杯日本大会開催の今年、慶大と銀之助氏が在学した学習院大のOB会が発起人となって、建立に至った。
銀之助氏のひ孫で、慶大監督も務めた真一氏(53)は「銀之助がラグビーを日本に伝えた原点にあるのは、ジェントルマンシップやフェアプレーという、ラグビーの精神を教えたいという気持ちだったと思う。今回のW杯で、海外のチームや観客の方々も含め、そういうラグビー精神を見せていただいた。銀之助がラグビーを伝えてくれたことが、本当にありがたいと思えた44日間でした。銀之助もさぞ喜んでいると思います」と話してくれた。
練習でスタジアムを訪れるチームを国歌で出迎えたファン、試合後に日本式のおじぎで感謝を伝えた海外のチーム、勝者を花道で送り出しその勝者もまた花道をつくって敗者をリスペクトする風景、台風19号の影響で試合が中止になって被災の後片付けを手伝ったカナダチーム…。もちろん日本チームの感動的な熱闘も忘れてはいけない。ラグビーのすてきな部分を惜しげもなく見せてくれたのが、今回のW杯だった。
「もっとラグビーを見たい」
そんなファンの熱い心に応えるのは、今度は国内のラグビーマンたちだ。
帝京大の岩出雅之監督は筑波大に逆転勝ちした後、「大学ラグビーでつないでいきたい。ファンを定着させたい」と語気を強めた。熱よ、続け。