河野が今大会2人目となる150キロを計測。大会注目投手として存在を誇示した (撮影・中島信生) 第91回選抜高等学校野球大会第4日(26日、甲子園)1回戦3試合が行われ、広陵(広島)が八戸学院光星(青森)に2-0で快勝した。先発した河野佳投手(3年)が、自己最速を2キロ更新する150キロを計測するなどして9回3安打完封。大会注目右腕の名をとどろかせた。平成最初の第61回大会優勝校の東邦(愛知)は、21世紀枠で初出場の富岡西(徳島)に3-1で勝利。初出場の筑陽学園(福岡)は、福知山成美(京都)に3-2で勝ち、2回戦に進出した。
いきなりの豪速球に聖地がどよめいた。河野は一回先頭の伊藤に対し、自己最速を更新する150キロの直球で空振り三振。これで波に乗り、明治神宮大会を含めた昨秋の公式戦全10試合でチーム打率・357を誇る強力打線をねじ伏せた。
「初回に150キロが出てホッとしました。そのおかげで7割から8割の力で投げられることができました」
五回まで毎回の8奪三振。2-0の八回は味方の2失策などで2死二、三塁と最大のピンチを迎えたが坂本勇(巨人)2世とも称される3番・武岡を141キロの直球で遊飛に仕留め、右手を突き上げた。
90人近い部員がいる強豪校でエースナンバーを背負い、中井監督が「球の強い野村祐輔」と同校出身の広島のエースにたとえる右腕。ただ、過去に2度投手失格を宣告されたことがある。
1年生の冬と2年生の4月に「力任せで投げるばかり」と指揮官から野手転向を命じられたが、河野は「投手は小さいときからやっていて憧れもあった。最後までやりたい」と監督室で涙ながらに直訴した。冬場に走り込みで下半身を強化し、縮こまったフォームを修正。監督に「投手をクビにしたことを謝らないといけない」と言わしめる力投を見せた。
今大会で150キロを超えたのは星稜(石川)の奥川恭伸投手(3年)に続く2人目だが、河野は「奥川君は負けたくない相手」とライバル心を隠さない。星稜は明治神宮大会で0-9の七回コールド負けを喫した相手でもあり「星稜に勝つという気持ちでここまでやってきた。目標は日本一ただ一つ」と言い切った。
組み合わせ上、星稜と戦えるのは決勝のみ。雪辱のときまで負けるわけにはいかない。 (原田遼太郎)
「うちのスピードガンでは148キロ。小川(171センチ)がいるように、身長がどうかだけでという見方はしないので球の力とか評価していく」
「うちの山岡と背丈は同じくらいだとしても横(体重)はあるだろう。スピードそのものより切れの良さを感じる」
「このぐらいのスピードは出ると思っていた。スライダーも切れている。今後も見ていきます」
「守備のミスが多かった。次に向け、細かなところを詰めていきたい」
★マウスピースで自己最速!
河野は2月、投球練習で欠けた歯の痛みに悩まされていた。緊急措置でティッシュを詰めて練習を続けるほどの我慢強さの持ち主だが、投球時に歯を食いしばることで奥歯が欠けていたのが原因という。見かねた中井監督から大会前にマウスピースをプレゼントされ、この日も装着。本人も「つけるようになってから調子いいです」と喜ぶニューアイテムの援護射撃で自己最速更新を果たした。
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