「元禄太平記」から4年後、「草燃える」で3度目の主演を務めました。源頼朝役を受けたのは、大河でやったことのない時代だったのと、頼朝が死んで終わりではなく、岩下志麻さん演じる妻・北条政子ら北条氏が政権を取っていくところまで描かれると聞いて面白いと思ったからです。
頼朝は女たらしと言われましたが、そうではない。父・義朝が平治の乱で平清盛に敗れ、頼朝が流された伊豆は田舎だった。そこへ天皇家の血を引いた男が来たから、天皇の血をもらえると北条家ら豪族が次から次へと娘を送り込んだ。だから女たらしに見えてしまったんです。
劇中では初めて大河で現代語を使用しました。使うのは頼朝ら東国(関東)の人たちだけ。時代劇言葉を使う京都の平家たちとの対立を表現しました。最初はクレームもありましたが、僕は正しかったと思いますね。
撮影中は、近眼である岩下さんの面白いエピソードをまとめた近眼10大話を作りました。待ち時間が長いと、岩下さんから「ねぇ、殿。10大話をして差し上げて」と促されて、僕が披露していましたよ。
第1話は、おしぼりの話。撮影が終わるとおしぼりを渡されるんです。その色が黄色。岩下さんに「どうぞ」と渡したら「まぁ、バナナ」とおっしゃったんです(笑)。「チンパンジーじゃないんだから。何か芸をしないとバナナはもらえないですよ」って。そんな話が10個もあるんです。
「天と地と」を含めて3作の大河に主演して感じたのは、一人の人間を長い時間をかけて演じると、熟してくるものがあるということ。見ている方も次第になじんでいって、一緒になって楽しめるのが大河の魅力です。連続でやっている作品には、そういう力がある。(テレビ朝日系長寿ドラマの)「相棒」もそうだと思いますね。
大河では多くの先輩方の側で芝居を見られて幸せでしたし、テレビの表も裏も学ばせてもらいました。今の自分を作ってくれたのは大河だとしみじみ思います。
次に演じたい役? ないですね。明治以前に僕の年まで生きた歴史上の人物が残念ながらいない。神代の時代、(127歳で没したとされる)神武天皇ぐらいです。やってみたいですけどね。 (おわり)