【女子社員コラム 言わせて系】「これどうやって作るの?」。子供たちの元気な声が調理室に響き渡る。先日、東京・府中市で開催された「SDGs体験ワークショップ」でのこと。延べ35人が参加し、家庭などで余った食材を調理して食べながら、「食品ロス」問題を考えようという催しだ。
ハロウィーンにちなんでパイなどを焼き、私も食べてみた。できあがった料理は、どれもが廃棄される運命にあった材料で作られたとは思えないおいしさだった。
主催したNPO法人「シェア・マインド」(東京・多摩市)の代表理事、松本靖子さん(37)たちは、家庭や会社で残った食品を集め、食べ物に困っている人に届ける「フードバンク」活動をしている。簡単に言うとたべもの銀行だ。
松本さんの会社員時代の体験が、活動のきっかけとなった。ある時、職を失った男性が社員寮を出なければならなくなった。仕事も住居も失い途方に暮れる人を前にしながら、手を差し伸べることができなかった。
一方で、日本では年間646万トンもの食材が、食べられるのに捨てられている。「食品ロス」をうまく活用できないか。その思いで2015年にNPO法人を設立した。
運営は厳しい。「動けば動くほど赤字」と松本さんは言う。理由は、余った食料を提供してもらうのも無料なら、食べ物に困っている人に渡すのも無料。活動費が生み出せないのだ。助成金は出るものの、使途は制限される。例えば、食料を保存する冷蔵庫は買えても、冷蔵庫の電気代には使えない。つまり、運営費には使えないケースがほとんどだという。
特定非営利活動促進法(NPO法)の施行から20年。現場から「法整備はまだ不十分」という声があがる中、地道な活動が続く。シェア・マインドは、余った缶詰やレトルト食品、活動資金となる未使用はがき、切手などを集めている。詳しくは、HP(https://www.sharemindjp.com/)へ。
私にも何かできないか-。食欲の秋に、廃棄寸前の食材で作られた料理をほおばりながら、食品ロス問題について考えさせられたのだった。(販売部・河野さや子)
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