(セ・リーグ、ヤクルト12x-9中日、20回戦、ヤクルト10勝9敗1分、4日、神宮)セ・リーグ2位のヤクルトは4日、中日20回戦(神宮)に延長十一回、12-9でサヨナラ勝ちした。九回に3-9から追い付き、十一回に上田剛史外野手(29)が1号サヨナラ3ランを放って試合を決めた。台風21号の影響で強風が吹き荒れる中、両軍計31安打21得点と大荒れのゲームを制して連敗を3でストップ。今季最大の6点差からの逆転劇を、来季続投が決まった小川淳司監督(61)は「奇跡」と表現した。
一人一人をたたえるように、小川監督は選手たちの背中をたたきながら「奇跡のようなゲームだった」と興奮を隠さなかった。九回に6点差を追い付き、迎えた延長十一回二死一、二塁。上田が振り抜いた打球は、一直線に右翼スタンドまで飛んだ。2年ぶりの本塁打は「人生初」というサヨナラ弾。お立ち台で喜びを爆発させた。
「最高です。自分でも(本塁打だと)思っていなかった。台風の中で来てくれたファンのためにも打ちたかった」
指揮官が常々口にする「執念」を選手が体現した。驚異的な粘りを見せたのは3-9の九回。代打・武内が4年ぶりの本塁打となる2ランで勢いをつけ、坂口、青木、山田哲がつないだ。8-9の二死一塁から大引が同点二塁打を放ち、試合を振り出しに戻した。
5連勝の後、前カードの広島戦(神宮)で3連敗。この日も二回までに6点を失った。しかし、誰も諦めていなかった。
決着をつけたのは指揮官が「代打でも、代走でも貴重な存在」と語る上田だった。上田には忘れられない失敗がある。第1次・小川政権の2011年。巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ初戦を控えた前日に、渋谷でコーヒーを飲んでいると携帯電話が鳴った。
野手ミーティングの日時を勘違いしていたことを知ると、タクシーですぐクラブハウスに向かった。到着後、空いていたのは小川監督の隣の席だけ。ナインににらまれながら、ミーティングの輪に入ったときは「(野球人生が)終わった」とさえ思ったという。
だが、監督は「罰金50万円を持ってこい」と通達。外野に集まったナインに「上田がチームに迷惑をかけたけど、俺はスタメンを外そうとは思わない。罰金でチャラにしてやってくれないか」と頭を下げた。
後日、罰金は上田に全額返金された。「両親に仕送りをしているのを知っていたから」と指揮官。この日の劇弾に、上田は「恩返しができてよかった」と声を弾ませた。
最大6点差以上から逆転勝ちしたのは今季初で、昨年7月26日の中日戦以来となった。台風21号の影響で強風が吹き荒れる中、思わぬ守備のミスも頻発し、両軍で計31安打21得点が飛び出した大荒れの試合を制し、チームは再び勝率を5割に戻した。
荒天にも負けず、集まった1万4582人の観衆に上田は「CSへ、あしたからまた戦っていきます」と誓った。この日の「執念」は、CS進出、そしてさらなるミラクルをも予感させるほど強烈なものだった。 (横山尚杜)
「(右前打でつないだ九回は)最後まで諦めない気持ちだった。こういうゲームをものにできたのは大きい」
「つなぐ意識だった。全員があきらめないという気持ちをもっているから、こういう結果になったと思う」
〔1〕ヤクルトが延長十一回に上田のサヨナラ本塁打で勝利。ヤクルトが最大6点差以上から逆転勝ちしたのは今季初めてで、昨年7月26日の中日戦(10点差=プロ野球タイ記録、五回表終了0-10→最終11-10)以来。
〔2〕九回以降に6点差を逆転勝ちしたのは、1987年6月13日のロッテ(八回裏1-7→九回表9-7、対近鉄)や93年6月5日の近鉄(九回表2-8→同裏9-8、対ダイエー)が記録した例がある。
〔3〕九回に6点差を同点に追い付いて延長戦に持ち込んだのは、2003年4月11日の巨人(九回表1-7→同裏7-7、最終8-8、対広島)などがある。