六回、中前にタイムリーを放った糸井。復帰即2打点で4番の責任を果たした(撮影・中島信生) (セ・リーグ、阪神10x-9ヤクルト=延長十一回、12回戦、阪神8勝4敗、4日、京セラ)これ以上、黒星をあふれさせるワケにはいかなかった。だから出た。打席からみなぎる気迫に、緑の「B」ランプが1つずつともる。相手にとって、やはり「4番糸井」は脅威以外の何物でもない。復帰即の2打点で、5点差を追いつく原動力となってみせた。
「オヤスミ」
帰りの車に乗り込む超人からは、眠気と? 笑みがこぼれていた。時計の短い針は、もうてっぺんをうかがっていたが、やはり全身全霊で勝ち取った勝利の味は格別だ。貧打にあえぎ今季ワーストの借金8を抱えていた虎に、ようやくたくましい男が帰ってきた。
3戦ぶり出場で「4番・右翼」で先発した。骨折した右腓骨の状態は芳しくなかったが、絶対に勝ちたかった。ベンチでジッとしてなどいられなかった。一回、三回と四球を選び、六回には中前にタイムリー。5点差を追いつくおぜん立てを見せた。そして迎えた、7-7の七回二死満塁。中尾が投じたカウント3-1からの5球目は、糸井を恐れるように内角高めに外れ、これが一時勝ち越しの押し出し四球となった。代走を送られ、お役御免。大黒柱がどっかり構えた虎打線は、驚くほどつながった。
「最下位やけど、まだまだ上位を狙えると思うし、みんなが一つになってやっていくしかない。そこに加われたら。だから出してください!」
前日3日の全体練習で言葉に熱を込め志願の出場だっただけに、有言実行の仕事っぷりだった。
右腓骨骨折した6月30日。試合後は自らの足でクラブハウスへ引き揚げた最強の超人でも、勝てないものがあった…。その日の試合前、なんとあごには大きな絆創膏が貼ってある! 朝の宿舎での出来事…。
「ひげそりってミスったらけっこう血、出るんやな。びっくりしたわ」
さすがの糸井も、鋭い刃に思わず苦笑い…。だが足の痛みには負けず、グラウンドに仁王立ちしている。もうふさがらないかとさえ思われた、チームの傷も、見事にカバーしてみせた。
やはり、絶対に欠かせない男だ。糸井が打点を挙げれば、4連勝中。とにかく勝ちに飢えている。まだまだ打ち足りない。
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