インタビューに答える阪神・岩貞=甲子園球場(撮影・水島啓輔) (セ・リーグ、阪神1-0巨人、10回戦、巨人7勝3敗、25日、甲子園)渾身の直球が、うなりをあげてミットに収まった。先発の岩貞は気迫あふれる投球で今季3勝目。球界屈指のエース・菅野との投げ合いを制し、お立ち台で控えめな笑顔がはじけた。
「日本で一番いいピッチャーですし、打線もなかなか点を取れないとは思っていたので。自分はバッター一人一人を抑えることしかできないと思って投げました」
四回まで毎回走者を背負ったが、そのたびギアを上げてねじ伏せた。四回二死では長野と陽岱鋼にこの日初めての連打を許し一、三塁のピンチ。打席に小林を迎えると、一息吐いて気合を入れ直した。2球連続力のこもった141キロ直球でファウル。これで追い込むと、1球ボールをはさみ最後は外角128キロチェンジアップ。二飛に料理し失点を許さなかった。
今季最長の7イニング、最多の120球を投げ、6安打無失点。菅野との対戦は2016年5月27日(東京ドーム)で3安打無失点の完封勝利を挙げて以来2度目だった。対菅野はこれで2戦2勝だ。
なかなか点が入らない緊迫した展開も、要所で右打者の内角への直球が効いた。懐に投げきれず痛打された前回登板の反省をしっかり修正。「ああいうボールを投げられていなかった。この1週間で多めに投げてきたので、それができて良かったです」。金本監督も「うまいことインサイドを攻めたりとか。多少のコントロールミスはあるもんですが、よく本当に粘り強く投げてくれました」とうなずいた。
前回登板の16日のDeNA戦(甲子園)では5回6安打4失点で降板。1本塁打、3二塁打を浴びるなど長打が目立った。ピンチで踏ん張れず、悔しい今季1敗目を喫していた。
負けて帰宅するそんな日も、いつもと同じように待っていてくれる家族に心が安らいだ。2015年オフに結婚。「負けた日でも、家に帰ると普段と変わらずに出迎えてくれる。ありがたいですね」。自然体の家族がいてくれるおかげで、特別な気分転換はしなくてもまた次の試合に切り替えていける。
「勝てたのでいいゲームになったとは思いますが、次はこの勝ちを忘れて、また初心に帰って投げたいと思います」
今季は5試合で3勝1敗、規定投球回数には届かないが、防御率は1・50まで上昇した。安定感も存在感も日に日に増している岩貞が、虎を勝利へと導く。 (箭内桃子)
★岩貞と菅野の投げ合いVTR
2016年5月27日の巨人戦(東京ドーム)で両投手が先発。阪神は一回一死から板山が四球を選び、福留の左前打で一、二塁。ゴメスの遊撃へのゴロを坂本が三塁へ悪送球する間に先制。この1点が決勝点となった。菅野は122球を投げ、7回6安打1失点。岩貞は126球を投げ、3安打に抑え、1-0で完封勝利した。
◎…阪神が今季甲子園で巨人に初勝利。甲子園での巨人戦の1-0勝利は2015年5月20日に藤浪が完封し、ゴメスが決勝打を放って以来、3年ぶり。東京ドームでの1-0勝利は2016年5月27日で、岩貞が菅野に投げ勝っている。甲子園での完封勝利は16年10月1日、岩貞が勝利投手になって以来2年ぶり
◎…また巨人戦で月間2度の完封は13年8月以来5年ぶり
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