■12月25日 「みなさん、寒い中ご苦労さん」とひと声でもかけたら印象がガラリと変わるのでは…。部屋を出入りするたびに、多くの報道陣に囲まれ、無言を貫く貴乃花親方(元横綱)の姿をテレビで見て、いつも思う。相撲道の前に「人の道」がある。親方にすれば「うっとうしい」だけかもしれないが、それが人としての最低限の礼儀ではないか。
御用納めの28日には、親方に対し日馬富士暴行事件での処分が下されるという。この期に及んでは「けん責」や「減俸」ではすみそうもない。先日の理事会で辞任した伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)のような役員待遇は付かず、理事から委員への2階級「降格」も考えられる。
しかし、親方は理事会に提出した書面の中で巡業部長としての事件報告の義務について「警察から協会に連絡してもらうことにした。一切非はない」などと主張しているという。理事解任で「はい、そうですか」とすんなり受け入れてはここまで徹底抗戦した意味はない。裁判に持ち込まれる可能性もあるだろう。
「目の前の記者の質問に腹が立っても、その後ろに国民がいることを忘れてはいけない」とある政治家は言っている。それと同じで寒空の下、部屋の前で待ち続ける報道陣の後ろには心配しながら見守るファンがいる。親方が自分の主張を通すには世間を味方にするのも必要だが、正面切って何か言ってくれないことには味方につきようもない。
お客さんに土俵を見てもらってなんぼの大相撲。自分たちの生活を支えるのはお客さん、ということを親方は理解しているのか。協会を敵に回して戦うのは自由だが、全体のイメージを低下させ客離れを起こしては何にもならない。 (今村忠)
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