■7月25日
復活をかける稀勢の里と新大関高安が注目を集めて始まった大相撲の名古屋場所は、終わってみれば通算最多勝を塗り替えた白鵬が再び揺るぎない存在感を示した。千代の富士の通算1045勝、魁皇の1047勝。そびえ立つ2本の巨木をタテ続けになぎ倒して千秋楽で1050勝。39回目の優勝だった。
他の力士にとって、ため息しか出ないような記録を次々に打ち立てる白鵬。モンゴルの首都ウランバートル出身だが、子供の頃は長い夏休みを親類のゲル(移動式住居)で過ごし水をくんだり馬で草原を駆け巡った。自然に備わった足腰の柔軟性。「民族の違いはどうしようもない」とお手上げの親方もいる。
それを乗り越えて白鵬より強くなるには常識外の稽古しかないのか。しかし、白鵬は力士たちに大きなヒントを与えている。基本をいかに大切にするかだ。一つは四股。白鵬は上げた足を下ろしたとき、それきりにしないで、そこでもう一つ腰をおろす。すると腰が割れ重心が低くなって安定した相撲が取れる。
1メートル92と長身の白鵬だが、体形は胴長だ。記録映画や写真で見る名横綱双葉山も胴長だった。その上腰が割れているからよけい重心が低く、それが不滅の69連勝という金字塔の礎にもなった。白鵬は準備運動ですり足も十分にやっているので、押されてもいなされても残れる足の運びが身についている。
歴代横綱と比べて稽古の番数は決して多くない。その代わり毎日欠かさないという準備運動にはみっちり1時間かける。だからけがも少ない。「横綱が1時間ならオレは2時間かける」。他の力士たちも、そのくらいの意地を見せないと後塵(こうじん)を拝するばかりだ。 (今村忠)
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