人材を生かすのも殺すのも、周囲を取り巻く環境や人。スターへの階段を上っていく選手を取材していると、それを痛感することが多い。
プロ野球・DeNAの球団社長を昨季限りで退任した池田純氏(41)と先日、話をする機会があった。「あれほどの選手になるとは」と吐露したのは、筒香嘉智外野手(25)についてだった。
変化を実感した場面として振り返ったのが、2016年1月31日のこと。沖縄・宜野湾キャンプの開始前日、筒香に熱い思いを打ち明けられたという。
「次は、僕たちの番ですね」
DeNAが経営に携わる前の11年との比較で、15年の観客動員は165%の181万人、座席稼働率は89・9%に達していた。筒香が入団した10年当時、閑古鳥が鳴いていた球場の光景はガラリと一変した。
12年に108試合出場、10本塁打と頭角を現した筒香だが、翌13年は23試合出場、1本塁打にとどまり、2軍落ちも経験した。球団関係者によると、パ・リーグ球団の強打者とのトレード案を口にする者までいたとか。しかし、球団を変えた経営者に刺激され、年々高まるファンの期待に背中を押され、主将は「日本の4番」へと成長を遂げた。
「クボという選手を知っていますか」
11年夏。電話口から聞こえてきたのはイタリアのサッカー代理人、マウリツィオ・モラーナ氏(42)の声だった。「クボ」とはサッカー日本代表FW久保裕也(23)=ヘント=のこと。高校3年の少年を、わざわざ来日して視察するというから驚いた。
その後、久保は19歳で海を渡るのだが、移籍先は世界のトップとはいえないスイスリーグ。目先の成功報酬を求めるなら他の選択肢もあったと聞く。それでも、同代理人は「まず欧州の文化、サッカーに慣れるため」にスイスを選んだ。選手の未来に投資できる冷静な仲介人が日本に来なければ、今の活躍はなかったかもしれない。
環境、出会いは人を変える。