2010年9月、十両昇進を決めた際の高安(中央)。両親の存在は常に支えとなっている 国内出身力士では平成生まれ初の大関。高安には生涯の「肩書」となるが、昭和のにおいも漂う。同じ田子ノ浦部屋に所属する兄弟子の横綱稀勢の里と同じ、中学卒業と同時に大相撲の門をたたいた「たたき上げ」でもある。
入門したときの同期生には相撲経験者もいた。自身が序二段のときに十両昇進を果たした力士もいた。三段目に上がるまでに丸2年もかかったが、「土俵には(お金でも)何でも落ちている。体一つで何かしてみたかった」と辛抱した。
母・ビビリタさん(55)はフィリピン出身。昭和55年以降、いわゆる出稼ぎのために来日した東南アジア女性が急増した平成時代の始まりが透けてみえる世代だ。父・栄二さん(66)は高安が幼少の頃、母とともにエスニックレストランを経営。茨城県内に複数の店舗を構えていた。
ところが、11年前。息子に大相撲入りを勧め、当時の鳴戸部屋の評判を聞きつけて同部屋へ連れていってくれた父は腎臓がんを患い、片方の腎臓を摘出した。それからは「できる範囲の仕事しかできなくなってしまった」(栄二さん)。最後まで残っていた地元、茨城・土浦市内の1店舗も閉めることになった。
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