赤松は気丈に振る舞ったが、野球を続けられるかどうかという不安は口にした 広島・赤松真人外野手(34)が28日、広島市内の球団事務所で緊急記者会見し、初期の胃がんを患っていることを明らかにした。15日に同市内の医療機関で個人的に健康診断に臨み、初めて受けた胃カメラ検査で発覚。命にかかわるレベルではないが、来年1月上旬に手術を受ける予定で「早く治して(復帰する)前例になるようにしたい」と誓った。
午後、マツダスタジアムで突然、開かれた記者会見。スーツ姿で現れた赤松が、自身に初期段階の胃がんが発覚したことを公表した。不安を胸のうちに押し込めて気丈に振る舞ったが、驚きととまどいは隠せなかった。
「本当にショック。誰もが自分は(がんに)ならんだろうというのが絶対にある。自分は運動もしているし、規則正しい生活も送っている。こういうのが見つかるとは夢にも思っていなかった」
元虎戦士だ。2008年1月に広島から阪神にFA移籍した新井の人的補償として、広島へ。新天地で非凡な身体能力が開花し、2010年にはゴールデングラブ賞を獲得した。近年も俊足と強肩を生かし、代走や守備固めとして活躍。今季は89試合で打率・368、12盗塁で25年ぶりのリーグ制覇に貢献した。12月初めのV旅行にも家族と元気に参加していただけに本人も驚くしかない。
今月15日、個人的に毎年受けている健康診断で医師のすすめで初めて胃カメラを飲んだところ、異常が見つかった。翌16日に再検査して、がんであることが判明した。
「言うか言わないか迷った。何も報告せずにキャンプを休み、帰ってきたときにやせていると、さまざまなことが出ると思った。ならば先に言った方がいいのかな…と」
来年1月上旬に広島市内の病院で腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術を受ける。初期段階とはいえ胃の半分を取り除く。全摘出の可能性もあるという。「40歳まで胃カメラを飲まないと僕は死んでいたと(医師から)言われた」。今は早期発見できたことを、前向きにとらえている。
ただ、不安がないわけではない。胃を摘出することが現役続行にどう影響するか。「生存率からすれば生きられるとは思う。野球を続けられる体になるのかという不安の方が大きい」と本音を吐露しつつ「(胃がんの手術をして)またプロの世界でやるのは珍しいと思う。いい前例を作れるようにしたい」と、復帰を誓った。(柏村翔)
「軽々しい言葉はかけられない。治すことに全力を傾けてほしい。彼は決して見せないが、周りが心配する以上に恐怖、不安があると思う。焦らずに、体を第一に考えてほしい」
「ショックだったけど考えようによっては早く見つかって良かった。球団としては、できる限り支えていくつもり。またマツダ(スタジアム)で走っている姿を見たい」
「初期段階ということなら、転移はないのでしょう。早期の胃がんならば、今の医療なら手術後2、3日で歩かせますし、早い段階で食生活も普通に戻すことができるでしょう。しっかりとリハビリすれば、来シーズン中に復帰することは十分に可能です」
★栗山英樹(ヤクルト、現日本ハム監督) 1985年5月、平衡感覚が狂う三半規管の難病「メニエール病」を発症。三半規管を麻痺させて一時的に症状を抑える治療などを受けたが完治せず、90年に29歳で引退
★王貞治(現ソフトバンク球団会長) ソフトバンク監督の2006年7月、胃がんを発表して腹腔鏡下手術で胃を全摘出。同年の残り試合は欠場したが、07年に現場に復帰して、08年まで監督を続けた
★越智大祐(巨人) 2008年からセットアッパーとして活躍したが、12年4月に背骨近くにある靱帯が骨になって神経を圧迫する難病「黄色靭帯骨化症」が判明。同6月に手術を受けたが、1軍復帰はかなわず、14年に31歳で引退
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