漫画ドラえもんのひみつ道具の一つに「正直太郎」という人形がある。手に持った人の気持ちを正直に代弁する人形で、好きな女性に思いを伝えられない親類のおじさんを助けるためにポケットから取り出した。ところが、心に秘めている嘘や人の悪口まであれこれと話し出し、トラブルばかり起こす。子供の頃に読み、口は災いの元という教訓を読み取った。
最近、サッカー日本代表のハリルホジッチ監督が「正直太郎」と重なってみえる。海外組のコンディション調整が難しいことや、全員がそろって戦術練習をする時間が少ないことを、幾度となく口にする。本人は率直に問題点を指摘しているつもりだろう。だが、ロシアW杯最終予選の初戦でつまずいたことで、報道陣は腕まくりしている。そうなると、説明すればするほど逆効果。「正直」は「言い訳」として受け取られてしまう。
言わぬが花という日本においては、采配の是非だけではなく、会見での潔さも指導者の資質として重視される。10月の豪州戦を1-1の引き分けで終え、最終予選を2勝1分け1敗と盛り返し、W杯出場のグループ2位以内も見えてきた。それでも、逆風が止まないのは、そうした文化の違いもあるのだろう。
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