札幌ドームではいきなり日本ハムが4点取った。しかし三回にソフトバンクは中村晃がソロホーマーで1点取り返す。
とたんにタカ軍団のベンチはまるで勝っているかのようなはしゃぎぶりだ。この明るさこそが練習と実力に裏打ちされた「タカの真骨頂」なのだろう。阪神と比較するのもなんだが、悲しいかな「超変革の途中」の虎は今シーズンにはこんなタッタ1点で、まだ負けているのにあんなにまるで勝っているような空気感は望むべくもない…。すべてはここからが課題なのだ。
なぜこんな雰囲気が出るのか? といえば、前日のソフトバンクの九回の逆襲と粘り…それもノーサインからのダブルスチールがゾクリと効いている。あの「足攻」がクサビとして生きている。つまり「走・攻・守」と簡単にいうが走の欠けたチームは気の抜けたビールのようなものだ。現役時代トリプルスリーをマークした金本監督は「足攻」の重要性を最も知っている。
新庄剛志はまだ20歳のキャピキャピの頃に真剣にこう言ったことがある。「1試合27個のアウトを全部自分一人でやりたい」
当時のトラ番諸氏は宇宙人新庄にけむに巻かれた。それでも本人は至極マジメだった。彼は二塁ベースの後方を守り、そこからあらゆる打球を処理できる自分を想定(?)してそう言ったのかもしれない。タメ息がでるほど夢がある。巨人戦で敬遠の球を強引に打ってヒットにしたり、いつもファンを魅了した。「そんなことはできるわけねぇだろ!」と舌打ちすることを、彼は「できるかもしれない」と思っていたフシがある。
なんでこんなことを書くかといえば、金本知憲という男はひょっとしたら新庄剛志の再来じゃないのか…とさえ思ったからだ。
なんでソレを言うか? 実は昼すぎ、長友孝輔の甲子園からの電話を受けてそう思った。
阪神の秋季練習はみっちり5時間はやる。その途中で金本監督はこの日は三塁側のファウルゾーンで30メートルダッシュの反復練習とタイムを計ったりした。長友は以前、高山選手にこう聞いたことがある。結構速いんだからなんで走らないの? と。すると高山は「今年は失敗したら…と勇気もなくて…思い切ったスタートも切れなかったんです」。この言葉のウラ側には「2年目は思い切っていくつもり…」という意欲がひそんでいる…と感じたそうである。
上本博紀、俊介、大和の中堅トリオに監督はみっちりとダッシュをやらせ、続いて北條史也、高山俊、中谷将大…これに今は宮崎でフェニックス・リーグに参加している俊足の内野手植田海を加えて、長友記者は「ビシッと鍛えればF1セブンの再現もあながち夢じゃないですよ」と鼻息の荒いことを言ってきた。
しかし…そこには神懸かりといわれた新庄剛志のような夢があるではないか。そのもっと向こうに藤村富美男のショーマンシップ…そのウラ側に潜む猛虎と呼ばれた男の「必死のパフォーマンス」までたどり着く。芽はあるんだ。